1ページ目から読む
4/4ページ目

桃のおかげで笑顔になれた

 2013年に東京オリンピック・パラリンピックを招致した際、東京都は「復興五輪」と位置づけていた。しかし新型コロナウィルス蔓延という未曾有の事態が起きると、そのマニフェストはいつの間にか立ち消えになり、MPCには東北復興コーナーとは名ばかりの休憩所(のようなもの)が設置された程度で、海外報道陣の目に留まることはなかった。

 今回の「福島の桃デリシャスプロジェクト」は完全なる自己満足でやっていたことだ。大会前からネガティブなニュースが多く、心が浮き立つ要素はあまりなかった(自分自身もネガティブなニュースを書いているので、責任の一端は自分にもある)。

 入国前から山のような書類提出を求められ、入国後も行動制限のあったメディアは、開会式前に疲弊していた。何かみんなに元気になること、笑顔になることはないだろうか。そう思っていたときに福島の陸上関係者の方に桃を差し入れいただいた。

ADVERTISEMENT

イタリア人記者もご満悦 筆者撮影

 福島県の桃をもらって笑顔の写真をSNSに載せたところ、それを見た方から「ありがとうございます」と言われることも多かった。桃を食べた人が笑顔になり、その写真を見た人が笑顔になる。笑顔の連鎖を作れたことは素直にうれしい。

 美味しいものは人を笑顔にするし、エリクソン監督が6つ食べた理由も多くの人が実感してくれたのではないだろうか。「俺も6個いける」と某アメリカ人記者は話していた。ぜひその話をアメリカで広めてもらいたいものだ。

 今回配った桃の数4箱、64個。種類は福島産の「あかつき」と「まどか」。あかつきは、一般的な白桃だが、香りが芳醇でとてもジューシー。一方、まどかは少し皮がパリッとしているのに果肉がジューシーで肉厚だった。

アメリカの陸上専門記者ジェフさんも笑顔に 筆者撮影

 米国、英国、イタリア、エクアドル、中国、フランス、カナダ、ケニア、日本、ブラジル、ジャマイカなどの記者と広報、ボランティア、スタッフの皆さん、笑顔で受け取り、おいしく食べてくれてありがとうございます。おいしい桃を育てた農家の皆さん、桃を差し入れしてくださった関係者のみなさん、NYの友人にも感謝。

 最後に、大会が終わっても復興五輪という看板は下ろさず、組織委員会には今後も継続的に被災地でのスポーツ振興を行ってほしいと思う。被災地の問題はまだまだ続いているのだから。