「現在長期ローンで家を買うのは得策か」を検証
現在40歳、年収800万円の会社員が4500万円の新築マンションを買うことにして、500万円を自己資金、残りの4000万円を民間住宅ローンで調達することを想定してみよう。期間は30年、つまり70歳まで返済することを想定。ボーナス返済分を4000万円のうちの2000万円を充当するとして、民間銀行の住宅ローンで調達する。
ある銀行では変動金利(2021年7月時点)で利率は0.475%。毎月の返済額は5万6918円。ボーナス返済は35万8042円。30年間の返済総額は4410万5000円となる。年間返済額143万1500円が年収に占める割合は17.9%。これならばこれから子供が成長して、学費やお稽古事で出費が膨らむことを考えても返済は難しくないと考えるはずだ。現在の借家が仮に月額15万円の家賃だとしたら年間家賃総額180万円と比べても割安。今は条件が合致すれば13年間にわたってローン債権額の1%相当額のローン控除制度もあるので、絶対に買った方がトクというのが結論となる。
ここまでは正解なのだが、今はあくまでもスタート時点での試算にすぎない。これからの世の中の変化をあなたは考えてみたことがあるだろうか。
金利や収入が変わったら…
あなたの会社、70歳まで安泰だろうか。30年間のローンの返済総額は4410万5000円にも及ぶ。金利はこれ以上低くなる可能性はないだろう。金利が上がったら、だけではなく、返済原資である自分の収入はずっと確保されていくのか、毎年ちゃんとボーナスは支給されるのか。30年の時間の経過に潜むリスクを考えると様々な不安要素がもたげてくるはずだ。
現時点ではバランスする収支でも、「向こう30年間現状が続く」、どんなにお気楽な会社員でもこう考える人は最近では少ないはずだ。終身雇用は約束されず、企業寿命30年説が飛び交うことを知っているはずなのに、家を買うという一大イベントの中で何となく「問題先送り」あるいは問題に対して「見えないふり」をしているのではないだろうか。
昭和平成脳、つまり過去の成功の方程式の延長線上で、未来を考えてはいけないのである。私たちは令和の時代に生きることを真剣に考えるべきなのだ。
マンション価格は上がっているだろうか。上がっていれば問題はない、自分が購入したマンションは、今後も値上がりが進む。だって今でもマンションは値上がりしているっていうじゃない。これからもそうだろうか。日本の人口は全体としては既に減少に転じているし、東京都ですらこの頃には確実に減少に向かっている。頼るのは、マンションがある立地のポテンシャルがどれだけ上がっているかだ。これまでの東京一極集中がさらに加速する、日本は大発展して国内外の投資マネーがこれまで以上に東京に集まる、と考えるのならば正解だ。だが人が思うほどに現実が進行しないのもこれまでの歴史が証明している。