文春オンライン

40歳、年収800万円の会社員は4500万円の新築マンションを買うべきか… 住宅ローンが抱える3つの危険な“リスク”

2021/08/24

 ここまでがマンション固有の抱えるリスクと金融のリスクだ。いつまでも自分の境遇が守られていると誰しもが考えがちだが、30年という長いタイムスパンでは、健康だけでなく自身の経済的境遇が今までどおりである保証はどこにもないことにもっと気づくべきだ。

いくら会社で定年が延長されても

 健康については、ローン設定時に団体生命保険(団信)に加入するので万が一の時には安心だ。しかし経済的境遇に関してはどうだろうか。自分の会社は大丈夫。そこそこの企業で安定しているし、定年はどんどん延長される方向にある。だから70歳までの借入期間で困ることはないだろう、などと思い込んではいないだろうか。

 たしかに日本企業の多くは、国の方針もあって今後定年を延長せざるを得なくなると思われる。そのいっぽうで、会社は今まで以上にグローバルな競争にさらされ、大企業といえども未来永劫安泰などという会社はない。

ADVERTISEMENT

 定年が伸びていくほど、人材はだぶつき、そんな状況下でもマーケットで勝ち抜いていかなければ企業として存続はできない。役所ならばともかく、いつまでも社員を厚遇できる会社は少ないだろう。人件費は会社にとってオフィス賃料とともに重たい固定費だからである。

 現在、多くの企業は定年を延長するいっぽうで、役職定年制度を導入し始めている。役職定年制度とは、一定の年齢に達すると、部長職や課長職を解き、役職手当をやめ、基本給を下げるなどの措置をとるものだ。年収はこれまでの50%から70%程度に引き下げられる。人件費総額を抑制しながら優秀な若手人材も確保していかないと、もはや日本企業は海外企業に勝てなくなるからだ。年収が半分になってもローン返済は半分にはならない。ローンを組んだ当初は返済額の年収比率が18%でも、半分になれば36%。家計はあっというまに破綻を迎える。  

©️iStock.com

楽観論ばかりの日本    

 終身雇用や年功序列といったクラシカルな人事制度はすでに機能しなくなっていることは自明の理だ。それをわかっていて定年だけ延長して今までの報酬には手を付けないでいるような生半可な企業は、あなたの定年を待つことなく淘汰されていくことになる。いざとなれば、会社はあなたの人生の都合なんて真剣に考えてはくれないものだ。だって人事などで、あなたがいつも不満に思うのと同様に、会社は自ら生き残ることのほうに必死なのだ。

 収入が減る、築年が古くなるいっぽうで価格は下がっていくマンションのためにローンを払い続ける、この「想定したくないリスク」をこれからの時代は考えるべきなのだ。

 21年の夏、東京五輪の開催やコロナ禍への対応について、政府は楽観論ばかりで現状を直視しない、起こりうるリスクの検証をせずに事態の悪化を招いたと、批判されている。この考え方は戦時中の日本軍、政府、社会が持ち続け、大きな災厄につながったものと同様だ。あなたの考える住宅購入計画も、実は今の日本で指摘されている「楽観論だらけ」なのだ。

40歳、年収800万円の会社員は4500万円の新築マンションを買うべきか… 住宅ローンが抱える3つの危険な“リスク”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー