街がクリスマスに彩られる。歩行者天国で賑わう小春日和の銀座中央通りは、クリスマスを前に浮き立つような気分だ。銀座4丁目交差点から、和光、銀座木村家、山野楽器、ミキモトといった老舗の並びに、教文館ビルはある。その出自はキリスト教系の出版社(来歴は「教文館物語」に詳しい)で、『花子とアン』の主人公、村岡花子が勤めていたという出版部をはじめ、キリスト教専門書やキリスト教具の売り場もあって、1933年竣工の建物には、厳かな雰囲気が漂う。
クリスマスシーズンということで、今回、教文館を取材させていただくことにしたが、プライベートでも銀座に行くたびに必ず立ち寄る本屋さんだ。1階・2階の和書売り場も、6階の子どもの本の専門店「ナルニア国」も、常連のお客様がついている、いつ行っても発見がある、落ち着ける雰囲気と丁寧な接客という、いい本屋さんの条件を具えている。
2階の一般書籍(和書)売り場は、大型書店になれた目からすると、さほど大きくない中に、文芸書、実用書、ビジネス書、文庫、新書などがバランスよく並ぶ。和書売り場の岩本洋一店長によると、銀座にお買い物に来る方はもちろん、古くから銀座にお住まいの老舗のご主人など、地元のお客様がよく来てくださるとのこと。売れ筋を大量に入れるのではなく、いい本を少しずつ、きちんと売り場を作っている印象がある。外国文学にも目が行き届いており、文豪からミステリー、話題の新刊まで、どの本を手に取ってもハズレがない安心感がある。
一手間かけた日常料理のレシピ本を揃えた料理書売り場、毎年大々的にフェアをするという歌舞伎を中心にした伝統芸能本、充実のご当地銀座本、それぞれの売り場が丁寧に作られ、全体として、教文館らしい売り場になっている。落ち着いた店内、銀座らしい大人なお客様、大量陳列や派手なPOPはなくても、信頼できる友人からそっと本を薦められている気分になる。
全館クリスマスシフトの教文館。2階では、普段から常設売り場のある戸田デザイン研究室の積み木セットと、青幻舎のパラパラブックスが目玉商品。子どもの本の専門店である6階「ナルニア国」とは棲み分けて、知育絵本やキャラクター絵本は2階で展開している。