丁寧な仕事が作るひとつひとつ特別な売り場
6階「ナルニア国」は、子どもの本の専門書店である。ビルの6階という立地にもかかわらず、子ども連れ、絵本ファン、図書館関係者などが絵本を求めて集まる場になっている。連続テレビ小説の影響で『赤毛のアン』の翻訳者、村岡花子さんの足跡を求めて見学者が多く来店したとのことだが、一時の流行ではない、地に足のついた売り場になっている。
『赤毛のアン』をはじめとした児童文学、店名の由来となった『ナルニア国物語』や映画化で人気再燃の『ホビットの冒険』、上橋菜穂子さんの『鹿の王』などのファンタジー、『ぐりとぐら』や『かばくん』など名作ロングセラー絵本から読み聞かせイベントに好適な新作絵本と、幅広く品揃えしている。
フロア全体が子どもの本ということもあって、子どもの目線に合わせた低い棚。店内はクリスマス装飾に飾られているが、華美にはならず、静かで落ち着いた雰囲気だ。フロア内にあるイベントスペースでは、絵本の原画展やトークショウなどが行われている。スタッフも絵本売り場専門の方で、売り場やフリーペーパーに絵本に対する思いや専門知識が活かされている。「今月出た絵本」「先月出た絵本」が一覧できる新刊棚の存在や、充実した読書推進や読み聞かせイベントに関する専門書が、書店員や図書館関係者のファンを惹きつけているのかと思う。
9階のイベントスペースは、毎年この時期、「ハウス・オブ・クリスマス」の催事場になっている。ドイツなどヨーロッパを中心に一年かけてスタッフが直接買い付けに行ったクリスマスグッズが並ぶ。ツリーに飾る伝統的なオーナメント、アドベント・カレンダー(クリスマスまでの日数を数えるため、小さな扉にお菓子などを隠したカレンダー)、オルゴール付きのスノードーム、イエス降誕の場面を再現した木製や陶製のジオラマ、表情豊かなくるみ割り人形など、ひとつひとつが丁寧な手仕事で作られているのがわかる。他ではなかなか見られない逸品揃い、クリスマスシーズンだけではもったいないくらいだ。
一年前にも書いたけれど(過去記事「クリスマスに本を贈りたくなる 有隣堂 厚木店」)、改めて――クリスマスには本を贈ろう。家族が、友人が、恋人がどんな一年を過ごしてきたか、どんな本が好きか、今年はどんな本を読んだかなと考えることが一番の贈り物。キリスト教徒でなくても、クリスマスを機会に大切な人のことを考えて過ごすのは素敵なことかと思う。
クリスマスギフトに悩んだら、銀座まで足を伸ばして教文館にどうぞ。王道の文学、ドキドキのミステリー、心温まる絵本も素敵なクリスマスグッズも揃ってますよ。
【本の話WEB 読者にオススメ】
さまざまな顔を持つ教文館だが、2階の和書売り場から岩本洋一店長に、オススメ本を挙げていただいた。文芸担当者が惚れこんでいるという、直木賞作家、木内昇さんの『櫛挽道守(くしひきちもり)』(集英社)。街道沿いの職人の家に生まれた女性が、ひたすらに技を磨き、櫛を作る、粗筋だけだとごく地味な小説だが、中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を続けて受賞、高い評価を得ている。
それぞれの売り場担当者が、それぞれの専門性をもって丁寧に売り場を作り、それが集まって心地よい空間を作っている、教文館の棚にふさわしい一冊だ。
教文館
住所 東京都中央区銀座4-5-1
営業時間(和書) 平日9:30~21:00/土曜10:00~21:00/日曜・祝日 10:00~20:00
URL:http://www.kyobunkwan.co.jp/
Twitter:https://twitter.com/kyobunkwan/