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人間の闇を、弱者につけこむ強者の側から描きたい

──主人公・九条間人(くじょうたいざ)は、たとえ依頼人がどんなクズでも弁護する弁護士です。また、九条の事務所のイソ弁(居候弁護士)・烏丸真司弁護士も、優秀ですが複雑な過去を抱えているようです。一般的な弁護士のイメージは「正義の味方」ですが、あえて彼らのようなダークヒーローに挑んだ理由を教えてください。

「九条は法律と道徳を分けて考えて依頼人を擁護するプロフェッショナル」と語る真鍋さん

真鍋 九条に依頼してくるのは、半グレ、ヤクザ、前科持ちというきな臭い人たちばかりですが、九条は「思想信条がないのが弁護士」と公言し、法律と道徳を分けて考えて依頼人を擁護するプロフェッショナルです。

 この作品を描く以前は、自分の中でも「弁護士は高尚で偉い人」という勝手なイメージがあったのですが、取材を進めてみると、「弁護士」といってもいろいろなタイプの方がいることを知りました。扱う案件によっても違うし、抱えている依頼人との力関係によって、取り込まれてしまう弁護士もいるそうです。

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 法律は人の権利を守りますが、人の命までは守れません。『ウシジマくん』では堕落し落ちていく人間の弱さを描きましたが、『九条の大罪』では弱者につけこむ強者の側から人間の闇を描けたらいいなと思っています。

倫理観や道徳ではなく「依頼人」が最優先

──九条弁護士は、忠実に自分の職務を全うしているだけだと。

真鍋 九条にとって最優先すべきものは倫理観や道徳ではなく「依頼人」だということです。そこが、彼がプロフェッショナルである部分です。

 刑務所の人たちから「あの弁護士(九条)はいい」と言われているそうですが、それだけリアルに描けているのかなと思っています。

『九条の大罪』からフルデジタルに移行した

──真鍋作品が論争を巻き起こす原因のひとつに、作品のリアルさがあると思われます。ファンタジーでも抗争ものでもなく、「リアル」な闇にこだわるのはなぜですか。

真鍋 基本的に葛藤があるのが好きで、自分の中でひっかかっている思いをできるだけ描こうとしているのですが、それが読者にとっても「リアル」ということなのかもしれません。

 読者を嫌な気持ちにさせようとか、疲れさせようと思って描いているわけではないんですが、人間の弱さとか真実みたいなところに近づこうと思うと、どうしてもああいう物語になってしまう、ということだと思います。