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「いいね」やフォロワーを増やすことだけが目的に

 これは日本にとっても他人事ではない。日本でも多くの国民がスマートフォンを持っており、SNSを利用して、YouTubeなどの動画を視聴しており、認知領域の戦いはいつでも開始できる。いや、もう始まっているだろう。

 江戸後期の林子平は「江戸の日本橋より唐・オランダまで境なしの水路なり」として、海防の重要性を訴えたが、現代に翻案すれば「東京のお茶の間から中国・アフガニスタンまで境なしのSNSなり」となるだろう。お茶の間やスマホも、大国からテロリストまでが死活的利益をかけて戦う戦場なのである。

 しかし認知領域の戦いに対し、日本はほとんど無防備だ。欧米では安全保障部門がフェイクニュース対策部隊を持っているほか、SNS事業者とも連携している。また陸上自衛隊員は無線に多くの欠陥があることから演習中もスマートフォンで連絡を取る事例が多いが、ウクライナにおいてはロシアのドローンがウクライナ兵のスマートフォンに偽情報やプロパガンダを押し込めてきたことを知ると慄然とせざるをえない。

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 日米共同演習の広報を比較しても、日本側は軍事的な能力を示すものになっていない。陸上自衛隊の公式アカウントが、ひつまぶしについてPRしているほどだ。

陸上自衛隊公式アカウントより

 ひつまぶしを熱く語る陸上自衛隊公式アカウント。何の意味があるのだろうか? 新隊員が増えるとは思えず、中国が抑止されるとも思えない。

 とある防衛官僚は話す。

「防衛省内局でも “戦略的コミュニケーション”がバズワードになっており、キャリアが大量投入され、SNSの推敲を行っている。しかし、上への説明のために安易に『いいね』やフォロワーを増やすことだけが目的になっている。中国への抑止効果の検証もなく、『戦ゴミ』と若手から笑われている」

 つまり、防衛省は、インターネットという戦場での勝ち方を分からないまま、いいねやフォロワーの数を争うという、まるでベトナム戦争で敵の死体の数を基準に作戦指導した米軍のような過ちを繰り返しているのだ。それではいけない。

 もしも不幸にして中国や北朝鮮と戦争になった場合、彼らがタリバン軍の作戦術を実行すればと慄然とする。例えば、サイバー攻撃や特殊部隊の攻撃で各地の駐屯地を孤立させ、補給と通信を寸断し、SNSでフェイクニュースで世論を混乱させ、あたかも自衛隊が連戦連敗であるかのような動画を拡散すれば、大変な苦戦になることは間違いない。

 実際、アゼルバイジャンとアルメニアのナゴルノ・カラバフ紛争でも、アルメニア軍部隊が次々とドローンによって撃破される映像がアゼルバイジャン軍によって拡散され、アルメニア軍はドローンの音を聞いただけで逃げ出すようになった。