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「感染した男性も家族がいたら証言できない」 あのススキノ“おっぱいクラスター”はなぜ起こったのか?《コロナ禍のススキノはいま》

日本色街彷徨 札幌・ススキノ#1

2021/09/04

話を聞いた「風俗店従業員」男性の波乱万丈

 きしめん屋を出て、ライブハウスと店主の親戚の店が入っていたビルを訪ねてみた。ビル内の店はすべて退店してしまったのだろうか、ビルの入り口には関係者以外立ち入り禁止の貼り紙があった。

 私がススキノで最初に話を聞いた風俗の関係者は、風俗嬢ではなく、ファッションヘルスの従業員の男性だった。

 これまでコロナ禍に生きる風俗嬢たちの声はいくつか聞いてきた。ここススキノでも聞いていくつもりだが、従業員の人たちの生の声というのを聞いたことがなかった。風俗業界において、裏方の仕事をしている彼らにどのような影響が出ているのか気にかかった。

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ススキノの様子。コロナ後は人通りもまばらだ ©八木澤高明

 北海道に入る前、國政さんに相談すると、

「風俗店の従業員がおるから、話を聞いたら面白いんじゃないか?」

 私のお願いに間髪入れず、段取りをつけてくれたのだった。

 それにしても、どうやって知り合ったのか気になり、「行きつけの店の方ですか?」と尋ねると、「バカモン、これでも再婚してからは静かにしとるんじゃ。もう5、6年前にヤフオクで彼からバイクを買うて。それから付き合いがはじまって、今に到るんじゃ」

「こんな光景を見ていると違和感しかないです」

  取材に応じてくれたのは、人妻ヘルスの従業員の「吉沢さん」だった。店の営業が終わってから彼の車の中で話を聞くことになった。

 日をまたいだ午前1時、ホテルで待機していると、携帯電話が鳴った。

「お疲れ様です。お待たせしてすいません。今から大丈夫ですので、ススキノに出てきてもらってもいいですか?」

 低音の落ち着いた口調で、まだ会ったことのない吉沢さんは言った。指定されたのは、コンビニの前だった。

 急いでホテルを出て、人通りも少ないススキノを歩いて、その場所へと向かったが、それらしき車はない。改めて電話をしてみると、想像していたものとは違う車がコンビニの前に止まっていた。

 てっきり、風俗嬢たちを送り迎えするようなバンで現れるのかと思ったら、宅配便会社が使うようなトラックの中から、目鼻立ちのはっきりとした男性が手を振っていた。

 それが吉沢さんだった。

人妻ヘルスの従業員を務める吉沢さん ©八木澤高明

 

 車は、バイクを積めるようにわざわざ宅配便会社の車を買い取って、車内を改造したものだった。バイクを置くスペースを確保するために、助手席は取っ払ってあって、パイプ椅子が置いてあった。

「すいません。座席がないので、その椅子に座ってください」

 これまで、紛争地や第三世界で、エンジンから煙を吹くようなかなりポンコツの車、押しがけで走る50年以上前のカローラなど、なかなか日本ではお目に掛かれないような車に乗せてもらったが、まさかこの日本で座席を取り払ってある車に乗るとは思わなかった。何だか、新鮮な気持ちでパイプ椅子に座るとともに、まだ会ったばかりの吉沢さんという人物に、勝手に好感を持った。

 最近のススキノの様子から尋ねると、吉沢さんは訥々と話し始めた。

「全然、活気は戻っていないですね。風俗業界に10年いるんですけど、こんな深夜でもコロナ前は人で溢れていました。今はほとんど歩いていないですよね。こんな光景を見ていると違和感しかないです」(#2に続く)

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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