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「起きてから慌てるんじゃ遅いんよ」“スーパーボランティア”尾畠さんが語る自然災害で生死を分ける“心構え”

『お天道様は見てる 尾畠春夫のことば』より #1

2021/09/03

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, 社会, ライフスタイル, 読書

note

 普段から、1、2年間くらい何かあっても大丈夫なように貯蓄も備蓄もしておかないと。災害が起きてから急にスーパーに駆け込んで買い占めるんじゃなくて、必要な物資はいつも備えておく。昔から「宵越しの金は持たぬ」なんて言葉もあるけど、実際はそんな人は少数で、農耕民族である日本人は、今よりずっと先のことを考えて生活していたと思うんよ。

©iStock.com

 もし仕事を失ったり、家を流されたりしても、生きてさえいれば、何とでもなる。ただ、誰かが助けてくれるだろうって、口を開けて待ってるだけじゃダメなんよ。ましてや子どもがいる人はな、産んだ責任がある。だって、そうでしょ? 「お父さん、お母さん、僕を産んでくれ」って頼んで産まれてきた子どもは一人もおらん。

 だから親は指を詰めても腹を切っても、人目なんてはばからず、泥にまみれて生き抜いて子どもを養わないとならないんだわ。豪華な家や食事がなくても、高給取りじゃなくても、お父ちゃんやお母ちゃんがなりふり構わず子どものために働いてくれたら、その背中を見て子どもは立派に育つと思うんよ。

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石にかじりついても生き抜く

 不景気とかで、長い間、勤めていた会社をリストラされたらショックよね。それで、がっかりして引きこもる人や自暴自棄になる人もいるかもしれん。

 だけど、今までネクタイして背広を着てた人が失業したって、あれはやだ、これはやだって言わなければ、海でも山でも建築現場でも、なんか探せば仕事はある。法治国家なんだから、法律にさえ違反しなければ何をしたっていいんよ。

 みっともないとか、もうダメだ、とか諦めないこと。石にかじりついても生き抜く。その覚悟ひとつで乗り越えられると思うんだわ。

【続きを読む】「もう反論する気もないんよ」「冗談じゃねえって」2歳児救出で“時の人”となった尾畠さんが抱えていた知られざる“苦悩”

お天道様は見てる 尾畠春夫のことば

白石 あづさ

文藝春秋

2021年8月25日 発売

「起きてから慌てるんじゃ遅いんよ」“スーパーボランティア”尾畠さんが語る自然災害で生死を分ける“心構え”

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