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密漁に手を染めるのは暴力団だけではなく…「これだけは言えない」と海保職員が隠す“新兵器”とは

『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』より #4

2021/08/30
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海保のドローンという新兵器

 ところが三宮フーズは、金額があまりにも莫大だったため逮捕され、取調べでも否認しているという。どこまでもシラを切り続けないと会社が持たない。とはいえ、おそらく有罪は避けられず、いずれにしても会社は危機的状況だ。

「たぶん証拠は挙がってる。乾燥ナマコの輸出をしてるのは外国人も多い。三宮フーズの経営者も韓国の人で、込み入った日本語での商談ができないから、密漁団との間に、仲介の日本人ブローカーが入ってたんだよ。犯罪は間に人が入れば入るほど情報が漏れるし、海保はドローン持ってるからさ」

 ドローンという新兵器は、これまでのヘリコプターに比べて圧倒的な小型で、海辺では波の音にかき消され、飛行音がほぼしない。暗視カメラやサーモグラフィーを用いれば、ゴムボートに乗った密漁団の動きや、車の中の様子さえ、手に取るように分かるのだという。

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©️iStock.com

 海保の職員に当てると、「これだけは言えない」と頑なに証言を拒む。かなり高性能な機器を揃えているのかもしれない。裁判がどうなるか分からぬが、初犯のため執行猶予が付いても、提出される証拠によっては、高額な罰金になる可能性はある。

密漁で儲けるのは暴力団だけではない

 暴力団は、彼らを取り締まる暴力団対策法をいくら改正しても音を上げなかったが、その周辺者である一般人は、暴力団排除条例ですぐにバンザイした。犯罪者はどれだけ踏みつけても立ち上がってくるが、たった一度の社会的制裁で銀行取引が停止し、立ち行かなくなる企業は立場が弱い。密漁犯罪も同じ図式が浮かび上がった。かといって、密漁がすぐになくなるとは考えにくい。今後は輸出も裏取引が一般的になるはずで、密漁事犯が巧妙化すれば、いたちごっこになる。