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緊急事態宣言解除への意見表明を避ける小池

 都議選(6月25日告示、7月4日投開票)前、最後となる都議会の定例会が、6月1日、開会された。小池は所信表明演説で、開催まで残り50日あまりの東京五輪・パラリンピックに向けた意欲を改めて強調した。6月15日、都民ファーストは都議選に当たり、公約として五輪の無観客開催を掲げた。小池は、都民ファーストへの応援について明言を避けていた。コロナ対策で連携が必要な自公を刺激したくないのだろうと言われた。都議選では、国政与党の自民党、公明党が五輪に言及しなかった一方、共産党は中止、立憲民主党は延期もしくは中止を掲げた。

 『PRESIDENT』2021年6月18日号では、小池は、直前になってぶれる必要がなくなったからか、「初めて明かす『五輪開催』私の本音」として、「東京五輪・パラリンピックは必ずやりぬきます!」と述べている。

 17日夜、沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言解除が決まった。7都道府県では、蔓延防止等重点措置に移行することとなった。東京都の新規感染者数は下げ止まっていた。小池は、政府に2度目の宣言発出を求めた年明けとは違い、今回の宣言解除にあたって、具体的な発言を避けた。感染状況が収まらない中での五輪開催への批判が高まり、五輪についても小池がどうするかの発信力は影を潜めた。都民ファーストが都議選の公約に無観客を掲げていることに関しても、「都議選というよりは、今は新型コロナウイルス対策に集中している」と、沈黙を守った(*4)。

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*4 「国政に波及する「首都決戦」沈黙守る小池都知事の思惑」『週刊エコノミスト』2021年6月22日号、36~37頁

行き詰まる菅政権のコロナ対策

 6月18日、政府の新型コロナウイルス対策分科会の会長・尾身茂ら専門家有志は、五輪の無観客開催が最も望ましいとの提言をとりまとめた。24日には宮内庁長官が、天皇が東京五輪・パラリンピック実施下での新型コロナの感染拡大を憂慮していると拝察すると、発言した。

 19日、小池は都などが計画していた五輪パブリックビューイングの中止を発表したが、政府、東京都、大会組織委員会、IOC、IPCの五者は21日、代表者会議を開き、蔓延防止等重点措置が7月11日までに解除されることを前提に、観客を「収容人数の50%までで、上限1万人」とすることで合意した。同時に、緊急事態宣言が出るか、重点措置が延長された場合は「無観客も含めた対応を基本とする」とも合意した。この時点で、開催中止はありえなくなっていた。残された選択肢は、観客を入れるか無観客かであった。

©文藝春秋

 東京都では、蔓延防止等重点措置への移行直前まで、新規感染者数が下げ止まっていたが、6月20日に前週の同じ曜日を超え、以降、上回り続けている。全国の新規感染者数も上昇した。オリンピックの競技開始が21日と迫る中、蔓延防止等重点措置を7月11日に解除できるかが問題となってきた。

 6月23日、大規模接種や職域接種に用いていたモデルナ社製のワクチンの供給が追いつかなくなった。7月に入ると、自治体での接種で用いられているファイザー社製のワクチン供給が不足する事態に陥った。ワクチン頼み1本となっていた菅政権のコロナ対策は行き詰まり、国民に失望をもたらし都議選での自民党敗北に続いていった。