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安倍か小池か 貧しい選択肢

 自民党内の反二階勢力は、安倍前首相・麻生財務相・甘利明税調会長(3A)で、「二階降ろし」に動いている(*6)。とくに安倍は、最近雑誌メディアにしばしば取り上げられている(*7)。キング再来かキングメーカーを狙うというのである。モリカケ問題・桜を見る会のスキャンダルが未解決なのにそのような座に就こうとは、自民党の自浄能力がダメになっているとしか言いようがない。もし安倍か小池かの究極の選択を迫られたら、国民はどうすればいいのであろうか。

*6 「菅首相は五輪強行→総選挙に賭けた」『テーミス』2021年7月号、8~9頁「安倍晋三─健康誇示&議連率い大策謀へ」同上12~13頁。「“またまた安倍”説に「うっせぇわ!」」『週刊ポスト』2021年6月4日号、44~46頁

*7 「“菅総裁”では選挙に勝てない 自民党で聞こえる「安倍晋三待望論」」『紙の爆弾』2021年6月号、24~28頁。「止まらない安倍氏の「放言」「キングメーカー」を志向」『週刊エコノミスト』2021年6月15日号、68─69頁。「菅不在で安倍・二階の闘争激化 「戦略的互恵」終わりの始まり」『週刊金曜日』2021年6月25日号、20~21頁、「この夏、敗者のどちらかが永田町を去る 二階vs安倍」『週刊現代』2021年6月26日号、52~55頁。「「政界人気 うなぎ登りの「安倍人気」 「再再登板説」消えず」『リベラル・タイム』2021年7月号、15頁。「“俺は自民党のトランプになる”安倍晋三の妄動が止まらない」『週刊ポスト』2021年7月2日号、40~42頁。「菅義偉支持令和のキングメーカーの胸の内 安倍晋三 首相返り咲きの野望」『サンデー毎日』2021年7月4日号、14~17頁。安倍晋三「前総理大臣・独占手記 これからの日本の話をしよう」『President』2021年7月16日号、16~19頁。「安倍晋三×櫻井よしこ」『月刊Hanada』2021年8月号、34~63頁

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 アベノミクスという、ひたすら企業の仕事のしやすさを求め、富者が富めば貧者にも分け前が来る(トリクルダウン)といって分け前の来なかった政治か(女性には、「産めよ・働け・育てろ」と迫った)、その後継者か、あるいは自分が目立つことが一番であり、自己責任として競争に打ち勝つ個人にのみ報酬のあるような政治かの選択になる。

©文藝春秋

 どちらもネオリベラルというところはよく似ていて、安倍はそれを新保守主義で糊塗しているだけだ。競争は確かに必要だが、競争に乗る条件が整っていない者には、まず基本的な生活の条件を与えなくてはならない。衣食住、そしてリプロダクティブ・ライツや、暴力からの自由、自分がつぶれるほどケアを担わなくてよいことなど、とくに女性政治家なら女性のニーズに気がついてほしいものである。

 そして、感染症からの自由である。強権的なタイプの男性政治家より、多様性を重んじ、決断力もある女性政治家が、その制圧に成功している。安倍が首相であったときには、アベノマスクや星野源の「うちで踊ろう」とのコラボなど、うまく対応していたとは言えないし、小池も派手な言動に走ったり、時々手を緩めすぎていた。

 菅も、GoToなどにこだわって、必要なときに必要な政策を取らなかった。彼には、国家のグランドデザインがあるとは思えない。ひたすら五輪を進めて、衆議院選挙になだれ込むことを狙っている。私たちは、こんな貧弱な選択肢に我慢しなければならないのだろうか。小池は「負ける戦はしない」として、国政進出を見送る可能性もあるし、コロナの感染拡大がひどくなり、政治責任ありとして身動きできなくなる場合もある。そうすると、誰が「次」なのか。彼女の運命はどこに向かうのだろうか。

【前編を読む】「神様、仏様、たか子様」と熱烈に支持されたが…“首相に最も近かった女”土井たか子の変革はなぜ失敗してしまったのか

百合子とたか子 女性政治リーダーの運命

岩本 美砂子

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