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自己弁護と責任逃れに愕然

「ユジク阿佐ヶ谷の閉館にかかわるすべての問題については、経営者である私に最終責任があると考えています。そこでの反省をふまえ、きちんとした労働環境を整えたうえで、一から新しい映画館をつくっていこう――そのような思いで、Morc阿佐ヶ谷を開館することにしました」

元ユジク阿佐ヶ谷の場所に開館したMorc阿佐ヶ谷

 実際に面会しての取材は約3時間におよんだが、そのかん、元スタッフが証言していたハラスメントの件を具体的に訊いても、才谷氏は話をはぐらかしつづけた。それどころか、被害者の側に落ち度があったかのような発言や被害者の人格を貶めるような発言をし、自己弁護と責任逃れに終始したことにはあらためて愕然とさせられた。具体的になにが問題だったのかを認識することなく述べられる「反省」ということばに、はたして意味があるだろうか。なかでも印象的だったのは、今回の元スタッフの告発についても、過去の労働争議についても、「自分は負けつづけている」と発言していたことだ。言うまでもなく、ハラスメントや労務問題は勝ち負けを判定するような事柄ではない。やはり依然として才谷氏は自身に対する批判を誹謗中傷や攻撃と受け止め、みずからをその被害者と認識しているのである。

新たなハラスメント問題が起きる前に

「私たちの声を無視しているいまの状況のままでは、間違いなく同じことが繰り返されると思いますし、場合によっては今回のことをふまえて、より抑圧的な運営がおこなわれるのではないかと不安でなりません」(Aさん)

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「映画が好きで、夢をもってこの業界に入った人間としては、どうしてこんなことになっちゃったんだろう、という悔しい気持ちでいっぱいです。いまは、映画が好きなひとたちにこそ、こういう問題があるということをしっかり認識してもらいたいですね」(Cさん)

 ユジク阿佐ヶ谷はなぜ閉館したのか――映画ファンであるならなおのこと、その経緯をめぐって沸き起こった切実な声に耳を傾ける必要がある。そうでなければ、本質的な問題はいつまでも放置され、さらに新たな問題を生み出すことにつながってしまうからだ。

 次回は、おなじくハラスメント問題をかかえたミニシアターの件に触れつつ、映画ジャーナリズムの責任について考えてみたい。