7月23日、阿佐ヶ谷駅の近くに、ミニシアター〈Morc(モーク)阿佐ヶ谷〉が開館した。
都内や東京近郊を生活圏とする映画ファンならば知っているひとも多いと思うが、この場所には、昨年まで〈ユジク阿佐ヶ谷〉というミニシアターがあった。最初の緊急事態宣言が明けたあと、「急激な経営環境の変化により、運営が困難と見込まれる為、苦渋の決断ではありますが、休館という措置を取らせていただきました」と告知を出して昨年8月29日から休館に入り、再開されぬまま、12月に閉館となったのである。
ここで説明されている「急激な経営環境の変化」を、映画ファンの多くはコロナ禍とそれにともなう緊急事態宣言の影響によるものと受け取ったことだろう。
しかし、実態はちがっていた。
休館期間中の昨年10月10日、「元ユジクスタッフの声」のツイッターアカウントを通じて、同館における労務問題(社会保険の未加入、時間外手当の未払いなど)やハラスメントの存在が明らかとなり、「アルバイト・一部社員と、上層部の間で休館の捉え方に相違」があることが示された。
ユジク阿佐ヶ谷、閉館の真相
その詳細について、元スタッフの方々にリモートで取材をおこなった。
「本当はもっと早い時期に休館に至った経緯をお客様に説明したかったのですが、私たちが声を上げると、上層部からなにかしら圧力がかかる危険性があり、最後の給与や退職金が支払われるのを待って、ツイートしました。金銭の支払いがきちんとなされるかどうかもすべて口約束でしたし、書面にしてほしいと要求しても無視されてきたので、最後の最後までなにが起こるかわからない状況だったんです。私が退職するときには、『退職に関する事項について、今後一切口外しないことを確認し、誹謗中傷にあたるような言動はしないこと』という主旨の合意書に署名させられたりもしました。もちろん私たちは正当な要求や抗議であると考えていますが、上層部にしてみれば誹謗中傷でしかない。この時点で認識がゆがんでいるんです」(元スタッフ・Aさん)
「そもそも休館に至ったのも、社内でのトラブルが大きな原因なのに、上層部の発表を読むと、まるでコロナだけが原因であるかのように感じられてしまいますよね。お客様が『再開してほしい』と声をかけてくださったり、応援のためにTシャツをたくさん買ってくださったりするたびに、働いている私たちもつらい気持ちになってしまって……。きちんと本当のことを説明したいと思い、私たちアルバイトスタッフで告知の文面を考え、上層部に提案もしましたが、取り合ってもらえませんでした」(元スタッフ・Bさん)