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「全方位強硬外交」を続ける習近平体制…世界各国が中国と渡り合うために真似すべき“日本流の交渉術”とは

『ラストエンペラー習近平』より #2

source : 文春新書

genre : ニュース, 国際, 政治, 歴史

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14項目の「不満」に見る中国の弱点

 さらにはオーストラリアのケースも興味深い。2020年11月、中国政府は、オーストラリアの大手メディアに対して、14項目の「不満」を突きつけたのである。これを見ると、中国が何に苛立ち、何を嫌がっているかがよく分かる。それは、この文書を手渡す際に、「中国は怒っている。中国を敵として扱うならば、中国は敵になるだろう」と恫喝したことが、かえって雄弁に物語っている。

 その14項目の要旨をみてみよう。

●「国家安全保障上」という理由で、インフラ、農業、畜産などの分野での中国の投資が制限されている。

 

●同様の理由で、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の2社を次世代通信規格「5G」ネットワークから排除した。

 

●「オーストラリアの民主的プロセスに干渉しようとする外国人の有害・秘密行動」を違法とした外国干渉法は、根拠なく中国を標的とみなしている。

 

●中豪間の交流と協力を政治的に扱い、中国人学者のビザ取り消しなどの制限を課している。

 

●新型コロナウイルスに関する国際的な独立調査の呼びかけは、中国に対する攻撃である。

 

●中国の新疆・香港・台湾問題に絶え間ない強引な干渉を行い、対中弾圧の先頭に立っている。

 

●非沿岸国なのに、南シナ海問題に関する国連提出用の声明を作成した。

 

●米国の反中キャンペーンに加担し、新型コロナを封じ込めようと努力する中国に対し、故意の誤報を広めている。

 

●中国を標的にした立法で、外国政府との合意を精査するようにした(ビクトリア州の「一帯一路」撤退を指している)。

 

●政府系シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所」(ウイグルでの強制労働を報告した)に資金を提供し、中国に対する世論操作を目的とした虚偽の報道を広めた。

 

●中国人ジャーナリストに対する家宅捜索や財産没収(スパイ容疑での捜査)。

 

●サイバー攻撃に関する中国への疑惑。

 

●国会議員による中国共産党への非難と、人種差別的な攻撃。

 

●2国間関係を害する、非友好的あるいは敵対的な中国報道。

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 つまり、これは中国政府自ら作成した、ここは攻められたくないという「中国の戦略的弱点」のリストだといえる。さらにいえば、この14項目こそ、中国から威圧されている周辺国が、中国に対して取るべき「つまずき戦術」の絶好の見本であり、マニュアルでもあるのだ。

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