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「全方位強硬外交」を続ける習近平体制…世界各国が中国と渡り合うために真似すべき“日本流の交渉術”とは

『ラストエンペラー習近平』より #2

source : 文春新書

genre : ニュース, 国際, 政治, 歴史

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「つまずき戦術」のマニュアル

 具体的にどうすればいいのかというと、実は日本がうまくやっていることを他の国々も真似すればいい。それは、習近平からの要請に対して、「ノー」と答えるというものだ。

 たとえば尖閣問題である。北京は「尖閣諸島は係争地域だ」と日本に認めさせようとしている。それによって、交渉に持ち込もうというのだ。ところが日本政府は一貫して「交渉することは何もない」という立場を崩していない。

習近平は自国の国民たちに向かって「中国はいまや偉大な大国であり、尖閣諸島は中国のものだ」というメッセージを発信しつづけている。ところが問題は、これが一向に実現していない、という点にある。

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写真はイメージです ©iStock.com

 いくら習近平が「西洋諸国は没落して、中国は台頭している」と主張したところで、国民側から「国家主席、それはその通りでしょうが、私たちの尖閣諸島はどうなっているのでしょうか?」と尋ねられたら、答えようがないだろう。さらには「なぜ日本に尖閣の不当な占拠を許しているのでしょうか? なぜ国家主席はそんなに臆病者なのですか?」となるのである。

 これは台湾問題にも通じることだ。「ところでいつになったら、当然、中国の一部であるはずの台湾に真実を思い知らせてやるのですか?」という疑問を生じさせるためにも、台湾問題をクローズアップするのは有効な戦略だといえる。

 また、インドが国境紛争に際して行った経済制裁も有効だ。これも中国企業にとっては、「なぜあんな山の奥のちっぽけな領土のために、何億ドルも損しなくてはならないのか」ということになる。

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