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「全方位強硬外交」を続ける習近平体制…世界各国が中国と渡り合うために真似すべき“日本流の交渉術”とは

『ラストエンペラー習近平』より #2

source : 文春新書

genre : ニュース, 国際, 政治, 歴史

 自らの後継者候補を明らかにせず、極端な独裁制を強める習近平。対外政策でも強硬姿勢をエスカレートさせる中国はアジアの国際政治を破壊し続けている……。

 そう語るのは国際政治学者・エドワード・ルトワック氏だ。ここでは同氏の著書『ラストエンペラー習近平』(文春新書)の一部を抜粋。世界各国が行うべき対中政策について、エドワード・ルトワック氏の考えを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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恥をかかせ、つまずかせ、転ばせる

 ここまで論じてきて、明らかになったことは、習近平が破壊的な人格であり、世界にとって(そして中国にとっても)非常に有害であることだ。彼が中国で政権に居座り続けるかぎり、彼はアジアの国際政治を破壊し続けるからだ。そのため、彼を政権から引きずり下ろすことが必要になってくる。

 そこで重要なのは、習近平に「恥をかかせる」ことだ。彼をつまずかせ、転ばせて、彼が主張した政策を実現できなくさせること。そして、彼の実行力、判断力に疑念を生じさせ、その権威や政権担当能力を否定するのである。アメリカをはじめ、日本やヨーロッパの政策担当者は、これを狙った行動をしなければならない。

 ここで注意しておかなければならないのは、アメリカの対中姿勢は、習近平を「つまずかせる」ような性格ではないということだ。

 これはバイデン政権が実は親中的であるという話ではない。トランプ政権における対中政策は、バイデン政権においても完全に継続されたのみならず、人権問題などではいっそう踏み込んだものになっている。

誰が習近平を「つまずかせる」のか?

 ただし、アメリカが行っているのは、中国に「対抗する」政策である。つまり、中国に対する「戦線を維持」しているのだ。アメリカがいくら経済で締め付けても、人権問題で批判しても、習近平体制を揺さぶることにはならない。なぜなら、それは習近平が備えることのできる攻撃だからだ。戦略において、相手がすでに備えを終えているところを攻めても、ただちに勝利にはつながらないのである。またアメリカは中国にとって「まだかなわないが、いつかは打ち勝つ強敵」であり、いまアメリカとの戦いで劣勢でも、習近平の名誉を損ねることにはならない。

 では「習近平をつまずかせる」という作業は誰が行うのか? それは中国が格下に見ている国々、EU、日本、インド、オーストラリアなどだ。あるいはベトナムやインドネシアを加えてもいい。このように習近平たちが「小国」とみなし、中国の言い分を受け入れるのが当然だと考えている国々からの反撃こそ、「習近平は失敗している」ことを可視化させ、世界および中国国内に広げる役割を果たすからである。