「何もなかったような顔で音楽活動を再開するとしたら許せません」
村上が受けた判決は懲役2年で、2022年中には出所すると見られている。絵里さんと母親は、Mall Boyzの沈黙が、村上が出所後に音楽活動を再開するための時間稼ぎではないかと感じているという。
「2021年4月に本人から送られてきた謝罪文には『今後「MURVSAKI」としての音楽活動を辞めることに決めました』と書いてありましたが、公判中もとても反省しているようには思えませんでしたし、報道されていないのをいいことに、何もなかったような顔で音楽活動を再開するとしたら許せません」
絵里さんは被害の記憶やMall Boyzとの進まない交渉にストレスをため、今も全身に蕁麻疹が出ることがあるという。取材の最中にも、蕁麻疹の症状が出てしまうことがあった。
Mall Boyzのマネジメント会社に楽曲配信の対応について質問状を送ると、以下のような回答があった。
「MURVSAKI氏の行いは決して許されるものではなく、当社としても同氏に強い憤りを感じております。
当社が同氏との間で、所属契約やマネジメント契約を締結していたという事実はありません。もっとも、同氏は、当社がマネジメントするアーティストの複数の楽曲制作に関与しておりました。本件の発生により、同氏との予定されていた活動を行うことができなくなり、当社にも小さくない損害が発生しております。
本件につき公式見解を発表するか否か及びその内容につき、当初から検討しておりました。しかし、被害者及びMURVSAKI氏本人のプライバシーに関わるものであるため、顧問弁護士とも協議し、現時点では発表するという判断をしてはおりません」
2017年に制定された監護者わいせつ罪は、被害者のプライバシーを保護するために加害者の実名を公にしないことが慣例となっている。しかし、それが意図せず二次被害を生んでしまうこともあるという。性犯罪事件を多く手掛けるアトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士はこう解説する。
「監護者わいせつ罪では、被害者の方のプライバシー保護のために、裁判でも被告人Aというように氏名秘匿で行うことがあります。メディアも、それに合わせて自主規制するケースが多いです。
ただ親子関係や事実婚状態など、心理的に抵抗できない子供に対してわいせつ行為を行う悪質な犯罪であるにもかかわらず、名前が公表されないことによって加害者の隠れ蓑になってしまうケースは多くあります。加害者が芸能活動をしていて、名前が出ないことで社会的な露出が続いて被害者が精神的な負担を受ける今回のケースは、法律の落とし穴と言えるかもしれません」