お客さんのニーズがあればリスキーな仕入れもする
余談だが、0.5㎝刻みでサイズが分かれる靴の仕入れはリスキーだ。一番出るのはМサイズの23~24㎝で、より小さいもの、大きなものが残った場合は、シンデレラが現れるまで在庫となる。靴の場合、服のようにダボっと着ればいいなど柔軟性がないのが悩みどころ。
さらに言えば、服や雑貨の仕入れ金額、つまり卸値は売値の8割~6割と幅があり、仮に1万円の商品を販売すれば、儲けは2000円~4000円である。
ところが、割引サービス、カード手数料などを差し引くと、700円~2700円ほどの利益しか出ない。そこにもってきて、靴の場合は関税が高いせいか仕入れ値も高く、利益はほんの少し。
T(編集部注:開店計画の頃から井形氏をサポートし続ける男性スタッフ)は、そんな大きなサイズを入れて、売れ残ったらどうするんですかと言ったが、腹をくくった。
こういう時の伝達はなぜだかうまくいくものだ。靴を探していたお客さんはブログを見て来店され、自分サイズのショートブーツがなぜここにあるのと、喜びつつも不思議そうだった。
商品を仕入れる時、イギリスでも日本の展示会でもお客さん一人ひとりを思い浮かべる。「今度、〇〇を入れて下さい」とリクエストをいただいたなぁ、など思い出しつつ色やサイズを選ぶ。ご要望は幅広い。いずれも予約注文ではなく、こんなものあればなぁ程度のリクエストだ。
「よろず屋に下がっているのと同じレースのカフェカーテン」「足首まで隠れるシルク素材のワンピース」、中には「ユニオンジャックがたくさん付いた撥水性のレインコート、傘とお揃いで」など、かなり難易度の高いものもある。
そして頑張って探し出し、商品を入れても、たまたま一番乗りで来られた別の方の手に渡ることもある。「これいいわね」と買っていかれ、所望されたお客さんは買い逃される。私たちの話から欲しかったものが入荷していたと知ると、「今度はいつ入るの」と、残念そうだ。
それでも、お客さんのリクエストの品を入れたら、すぐ売れたんですよ……と話すと「そうでしょう。今後もああいうものを入れるべきよ」と、まんざらでもない様子だ。