「芝生の水捌けもすごくよくなっている」
さらに驚くべきは、「芝生の水捌けもすごくよくなっている」ことだった。雨が降るとどうしても土の部分に目がいき、水たまりの有無で水捌けの良し悪しを判断する。しかし甲子園の場合、阪神OBも雨の日の試合で「外野の方が大変なんですよ」と解説するように芝生部分の水捌けの方が心配されてきたのだ。ただ、これはもう過去の心配に過ぎず、実は2020年1月に芝生部分の水捌けが良くなるよう、下地部分の工事が行われていたのだ。
「大雨が降ると芝生部分に何か所か水の道ができる。そこに暗渠排水管という透水管を入れました。そこは絶対水捌けがいいのはわかってるんやけども、それ以外の部分にもちょっと深い穴をあけてそこに砂を入れました」。それまで、芝生の下の層は土がメインで水が溜まりやすかった。そこに砂を入れていくことで層の質が変化し、水捌けが劇的に良くなったという。
「元々芝生の下を砂ベースにすると乾きやすくて成長しないというのが定説やったのが、砂と一緒に混ぜる材料や散水設備なども進化して解消できるようになった」。もしこの作業が行われずに今年の夏を迎えていた場合、芝生が腐っていた可能性もあった。そうなると選手たちは「全然ですね!」と笑顔でプレーすることはできなかっただろう。
怒涛の高校野球期間から“中1日”でのプロ野球再開。たった1日の準備期間でも、これまでの積み重ねや経験をもって臨めばその中での最高の状態に仕上がる。
9月3日からの伝統の一戦はサヨナラを含む二夜連続の逆転勝利に、6点差を追いついての価値ある引き分け。1万8000人の熱気が残る中「すごい頑張ったなぁと思いながらグラウンド整備していた」という金沢部長は、グラウンドキーパーとして阪神の日本一を未だ目にしていない。「そら、優勝したらめちゃくちゃ嬉しいよ!」。最高のグラウンドを作り続けてくれている阪神園芸さんを、この秋本物の日本一にしてほしい。
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