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阪神が優勝するための秘策はあるのか 下位3球団のファンに聞いてみたら…

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/08/31
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 首位陥落――。8月29日、4月3日以来、守り続けてきたこの位置をついに明け渡してしまった。しかもいっきに3位に転落。試合後、矢野監督は、「落ち込む必要もない」と気丈に言った。だが、本音はどうだろう。「最終的に一番上にいることが大事」。その通りであるが、広島に3連敗した今のチーム状況からは盛り返す要素がまったく見えない。

 要は、優勝に必須の勢いがないのだ。

 今さら言うなよ、とお叱りを受けるのを承知で押さえておきたいことがある。

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 後半のスタートがよくなかった。

 開幕と比較すれば、一目瞭然。前半戦の開幕投手は昨年、先発で1勝の藤浪晋太郎だった。対して後半は、西勇輝を頭にもってくる。前半4勝の西をあえてエースと位置づけ、西に投手陣を牽引することを期待したのだろう。だが、西はその期待に応えられず、6回5失点で敗戦。その後も2回登板し、全ての試合を落としている。

 藤浪の開幕投手は、実績より、昨シーズン終盤からの「流れ」を汲んでのものだった。藤浪は、勝利投手にこそなれなかったが、昨シーズンの最後ローテに入り、3試合に登板し、いい投球をしていた。実績を重視することより、目に見えない勢いや流れを買っての選択。無難な選択肢をとらず、攻めた結果が、開幕ダッシュにつながった。

藤浪晋太郎 ©文藝春秋

 約1ヶ月の中断を経ての後半戦の始まりにも、そうした攻めがほしかった。

 その意味で、前半7勝の秋山拓巳を頭に持ってくるべきだっただろう。あるいは、前半と同じ勢いをもたらすことを念頭に、いっそ、藤浪をもってきても面白かったのではないか。仮に、それで落としたとしても、攻めた結果の敗戦。流れを失うわけではない。だが、安全策の末に敗戦すると、逆流する川に立つような状態となる。今がまさに、その状態だ。

 では、どうすればこの状態を脱し、再び、流れや勢いを味方につけることができるのか。

 矢野監督に代わり、そのために必要な情報収集をやってみた。

阪神が「勢い」を取り戻すための秘策を考えてみた

 というわけで、現在、下位に位置する3球団を代表する面々に、阪神が優勝するための知恵をこそっと教えてもらうことにした。敵こそ知る、灯台下暗しの強み、弱みがあるにちがいない。それらを知ることからやり直そうというわけだ。

 ちなみに、優勝した際には、関西ダービーとなるはずのオリックスの代表にも訊いている。

 回答者は、横浜ベイスターズを代表して本コーナーの執筆者でもある松樟太郎さん。中日は、本コーナーのヘッドコーチを務める須賀くん(ミシマ社)、広島代表には、周防大島に住む元パンクロッカーの農家・中村明珍さん(通称チンさん)になってもらった(実際の回答者は、中村さんが、自分より相応しいと判断されて、熱烈カープファンのチンさんの義兄となった。なんでも関西に住んでおられるそうだ)。オリックス・バファローズはここで二度コラムを書いてくれた西村さんが回答してくれた。

 質問内容は、以下。

(1)今シーズンのセ・リーグの優勝、本音ではどこがいいですか?(阪神、巨人、ヤクルトの3択)
(2)自球団にとって今年の阪神はどこが強い?(いやなところ)
(3)逆にどこが弱点? 
(4)他球団から見て、今年の阪神なら巨人にこう戦えばいいのに?(なんでそれができてないの?)というポイントあれば教えてください。

 まずは、「今シーズンのセ・リーグの優勝、本音ではどこがいいですか?(阪神、巨人、ヤクルトの3択)」。

 忖度ではなく阪神。巨人はいろいろな意味で今年優勝してはならない気がする。ヤクルトはなんというか、これで優勝しちゃっていいの、という気がする(まだ本気出してない感がある)――松・横浜

 阪神(巨人以外ならどこでもいい)――チン兄・広島

 阪神です。2択でしたが、ヤクルトが優勝すると現状で貯金8つ献上(8/27時点、以下同)している中日が、他2球団のファンに恨まれそうなので。――須賀・中日

 吉報である。

 セ・リーグのライバル3球団が、理由は違うとはいえ、阪神優勝を望んでくれている。これは大きい。

 優勝の条件の一つに、「敵を味方につけること」があるならば、この点においては巨人をリードしているのは間違いない。

 幸先良いと言っていいだろう。

 ところで、オリックスファンの西村さんも阪神を選んでくれた。その理由は、「阪神とオリックスの日本シリーズになった場合、関西のマスコミが両者をどのように扱うのか大変興味深い」からだそうだ。確かに、気になるところではある。

他球団から見た阪神の強みと弱点

 次は、他球団から見た阪神の強みと弱点を同時に並べてみよう。

 最初に、広島代表のチンさん兄のコメントを紹介する。

「強み:広島にとっては秋山投手にボコボコにやられてる。若手の活躍が大きい」

「弱点:藤浪と西の不振」

 残念ながら、これを回答してもらった数日後、秋山が打たれた。昨年から続いていた秋山の対広島の連勝も8でストップした。弱点に関しては、その通りというのみである。

 中日・須賀くんの見方はこうだ。

「強み:やはり23本塁打の佐藤輝明です。中日のホームラン1位(ビシエド、15本)と2位(木下拓哉 7本)を足しても上回るとは」

 やはり、サトテルの復活、活躍は欠かせないようだ。

「弱点:ペナントレースが巨人と一騎打ちになったときに、タイガースが競り勝つイメージを持てないです。過去『1位阪神、2位巨人』のシーズンは一度もなく、逆は16回もあるようです」

 ……なんと。データ通りなら、優勝の条件として、「1位阪神、2位ヤクルト」のパターンしかないことになる。うーむ。

 横浜の松さんには希望を照ら出してほしいものだ。

「強み:外国人がほぼ機能しているところ。阪神の助っ人は、グリーンウェルやらメンチやら、最近ならソラーテやら、大体一人はお笑い枠がいたように思うのだけど、今年はそれがいないように思います。笑いの本場は関西ということで、それはそれで寂しいです。あえて言えばロハス?」

 さすがは松先生。実際、ロハスは少しお笑い枠の感がある。新外国人のためコロナ対策で遅れての来日となったロハスは、入団会見の際、ボディービルダーばりに両腕の握り拳を見せつけて、がぉーと猛獣が吠える表情をつくった。大いに強さを誇ってくれたわけだ。だが、試合に出場し始めた直後から大不振。それに伴う意気消沈な顔。その落差がなかなかキュートだった。

「弱み:やっぱり守備? 先日の牧のサイクルヒットの際は、サトテルのナイスアシストがありましたが、あの守備は監督としては見てられないだろうなぁ」

 グーの音も出ない。

 こうなったら、オリックスの西村さんに、救いの手を求めるほかなかろう。

「強み:中野と近本ですかね……一塁に出たらわくわくする選手が2人もいるのは、一番うらやましいポイントですね。阪神ファンは見てて面白いだろうなあと思います」

 そうだよね、そうだよね。足、スピード、この脅威で、もっともっとかき回していきたいよね。

「弱点:矢野監督と井上コーチの暴言?」

 うむ。これなら大丈夫。きっと2人はもう吐かない!(3位だし)

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