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「さっきの話、本当にできるの?」「結局できないの?」

 南千住の住宅街を抜けて国道4号沿いを進むと、隅田川の南岸に突き当たる場所に、川に架かる千住大橋に登る螺旋階段がある。階段にさしかかると、幸子は言った。

幸子 「さっきの話、本当にできるの?」

優希 「何が?」

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幸子 「ばあちゃんの話」

優希 「ああ」(どうでもよかったので、気のない受け答えをする)

幸子 「やる気がないなら言わないで。見た目だけの話好きじゃないの知ってるでしょ。亮(編集部注:優希の義父だった男性)と暮らしてたんだから、そのくらい分かるでしょ」

優希 「分かってるよ」

幸子 「それなら本当にできるの?」

優希 「やろうと思えばできるんじゃない?」

 大橋を渡って北千住駅に続く商店街を歩く途中、幸子は惣菜屋に立ち寄って、シューマイと揚げ物を買い、3人で食べながら歩いた。

優希 (ため息をつく。)

幸子 「結局できないの? お前がやるって言ったからシューマイを買ったの。結局できないの?」

 北千住駅前に着き、ペデストリアンデッキのベンチに座ってビルの壁に埋め込まれた大型ビジョンを眺めていると、自殺防止のための相談ダイヤルの広告が流れていた。

優希 「こういうところに相談したら生活保護につなげてくれるんじゃない?」

幸子 「まだそんなこと言ってんの? 結局できないの?」

 その後3人は、北千住駅から電車に乗り、塗装会社の寮に戻った。

事件当日(優希の証言より)

 事件当日26日の朝、優希は幸子に起こされて目を覚ました。寮の部屋の荷物はほとんどが既に片付けられてボストンバッグに詰められていた。幸子が「いつでも出られるように」と言ったので、優希は「本当にやるんだな」と思った。その後、以下のようなやり取りがあった。なお、幸子は、優希と殺害方法について話し合ったことを否定している。

幸子 「どうやってやる気?」

優希 「考えてない」

幸子 「本当にやる気あんの?」

優希 (延長コードを持ってきて)「これでやれるんじゃないの?」

幸子 「じじいは?」

優希 延長コードで首を絞める動作をして見せる。

幸子 「まあいいや。指紋には気をつけろよ。あと、何かしら理由つけないと、(祖父母宅には)入れないよ」

優希 「仕事着で行って、『仕事で近くに来たから寄った』、とか?」

幸子 「仕事着持って行くってことでしょ? 邪魔になる。○○建設のことを言えばいいんじゃない?」

 昔から人をだます際にしてきたように、幸子が嘘の場面設定を詳しく考える。○○建設のビルの何階から何階が社員寮で、寮のどの部屋に住むことになるのかを幸子が考え優希に伝えた。