アスリートを芸能界のタレントと区別する必要性
実は私もそういう感覚を全否定しているわけではまったくありません。むしろこういう声を含めて議論を活発にすることで、ジェンダー平等社会に近づいていくのだと思っています。
そもそもこの記者会見では、IOCが策定した「ジェンダー平等のための表象ガイドライン」を発表しました。このガイドラインを、私と組織委理事で中京大の來田享子教授とで大会前に和訳し、事前にメディアの皆さんに配布しました。そこには以下のようなことが書かれています。
• スポーツ報道では、女性アスリートの『競技場外』の特徴(容姿、ユニフォームや私生活)に過剰な焦点が当てられ、競技パフォーマンスや能力よりも容姿が重視される場合が多々ある
• 女性アスリートは多くの場合、まず性別や妻・母・女らしさなどのジェンダーの役割が多分にフォーカスされ、その後でアスリートとして定義されるが、男性アスリートはそうではない。どのアスリートもスキルや実績を最重要視して報道されるべきである
• 避けるべき用語:『セクシー』『女の子っぽい』『男らしい』『イケメン』『美少女』『美しすぎる』『美女アスリート』『ママアスリート』。また、女性アスリートを「ちゃん」付けで呼んだり、愛称で呼んだりする場合に、アスリートの価値を低めたりすることがないよう、又、ジェンダー平等の確保に注意すること
• 不必要に容姿に注目しない。容姿(メイク、髪、ネイル)、ユニフォームや身体の一部(股間のショット、胸の谷間、お尻)などアスリートのパフォーマンスに特に関係がないものに画像の焦点をあてないようにする。性的魅力ではなく、スポーツの魅力を描くようにする
これを読んで、やれやれ、厄介な世の中になったもんだ、とため息をついた人もいるでしょう。あるいは、そうは言っても人気商売なんだから、とか。
ただし、このガイドラインには、沢山の注釈が必要です。
まず、オリンピック、パラリンピックはほぼ公正なジェンダーバランスで報道がされる唯一の機会であること。問題は、年間を通してそれができるかどうかです。