主治医の言葉を思い出して、困り果てた挙げ句に向かった福祉事務所では、まったく相手にされなかった。
「24歳? あなたみたいな若い人は生活保護って受けられないんだよ」
「頼れる男性や好きな男性はいないの? 一時的でも頼ってみたら?」
「まだ働けるでしょう。アルバイトならあちこちで募集しているよ」
「どうしてこんなになるまで資格を取っておかなかったの。それじゃ生活保護を受けたって同じことの繰り返しだよ」
人生に絶望し、帰宅途中にある友人宅で大量服薬をして自殺を図った。
医療費がかからないだけでも大きな安心
気がついた時には、友人に起こされて助けられていた。幸いにも命は助かったが、大量服薬のせいで、体はまったく動かせない。救急車で病院に運ばれ、そのまま入院する。退院後は家で治療することになった。駆けつけた友人がたまたまSNS上で私のTwitterを見つけ、連絡してくれた。
退院後、一緒に生活保護の申請窓口に向かうと、要保護性ありということで即日受理された。本人も「過去の福祉事務所の発言は何だったのか。もう少し早く支援団体に相談したかった、本当に安心しました」と涙ぐみながら話してくれた。
生活保護が開始されると、国民健康保険の被保険者から外れる。ほとんどの生活保護受給者は、医療費の全額が医療扶助で支払われる。けがの治療や心身の休養が必要な困窮者には、医療費がかからないだけでも大きな安心だ。後遺症が残るかもしれないが、彼女は今、リハビリに励んでいる。
女性ひとりで相談窓口に行くと、体よく追い返される
生活保護を受けようと福祉事務所の相談窓口に赴くと、ろくに話も聞かれずに貸付を紹介されたり、劣悪な遠方の施設への入居を勧められたりといった事例が今も散見される。
厚生労働省も窓口で追い返すような「水際対策」を厳しく戒めている。生活保護は受けて当然の権利であることをどう世の中に浸透させていくかが、今後の行政のポイントとなるだろう。
幾多の病気を抱えて働けなくなっていた佐野さんは当然、保護案件に該当するケースだった。しかし、最初にひとりで相談窓口に出かけた時は保護申請させてもらえなかった。