「うちの偉い人間をファミリーラウンジに」

 これだけではない。バブルの目的を根本から崩すとんでもないシステムが存在した。

「『アップグレードカード』です。それがあれば、別ゾーンのボランティアやスタッフ、メディア関係者でも、誰でもアスリートバブルに入れてしまう。カード以外にも、別ゾーンに入れるリストバンドもありました。

 アップグレードカードについては、以前からあるシステムでリオ五輪でも使われていました。ただ今回はコロナ禍で開催される五輪だから、これまでのような枚数では発行できませんと組織委内でも言われていたのに、結局守られず、何枚ものアップグレードカードが発行されました」

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 どうしてこのような事態に至ったのか。

アスリートバブルの中に入れる「青色・2番」のアクレディカードを持つ橋本聖子氏。バブルの外(白色)のボランティアスタッフと、同じ写真に写っている。

「組織委にはかなり早い段階から、スポンサー企業などからの出向組が入っています。あまり仕事もしないので、現場の若い世代から『ゆるキャラ』と揶揄されていたくらいです。彼らは出身母体への利益誘導員ということなのか、『うちの偉い人間が来るから、ファミリーラウンジに入るためのアップグレードカードをお願い』としょっちゅう依頼をするのです」

 各競技会場にはIOC(国際オリンピック委員会)役員がくつろぐための「OF(オリンピックファミリー)ラウンジ」や、IF(各国の競技団体を統括する国際競技連盟)のために用意された「IFラウンジ」がある。王族や貴族も多いIOC役員、あるいは委員や各国オリンピック委員会の会長たちといった、いわゆる「オリンピックファミリ-」(OF)は「五輪貴族」とも呼ばれる特権意識の強いグループだ。