どこでもパスの「アップグレードカード」
バッハ会長をはじめとする五輪貴族のためのOFラウンジは、空港のファーストクラス・ラウンジのような高級感があるという。本来、ワインなどお酒も自由に飲める場所だが、コロナ禍で批判が高まり、今回、酒類の提供はなかった。しかし、OFラウンジに入るというだけで特権意識を満たされるのか、各企業からの出向組である「ゆるキャラおじさん」たちは、こうしたOFラウンジに社の幹部が入れるように奔走する。
「原則として、各企業からは、会長か社長しかOFラウンジに入れません。だから、それ以外の幹部が来るたびにアップグレードカードを手配しろと言ってくるわけです。組織委内では、彼らは上司や同僚ですからなかなか断れません」
とにかくどんなに厳格にゾーン分けしていても、アップグレードカードさえあれば、アスリートバブルだろうが、OFラウンジだろうが、他のゾーンに往来自由ということだ。これではバブル自体が存在しないのと同じではないか。
五輪貴族にものいえぬ平民
丸川大臣が自信満々に、五輪参加者の遵守すべきコロナ対策上のルールをまとめたと言っていたプレイブックの存在はなんだったのか。
「そもそも実現可能性のない机上の空論で、守られるはずのないプレイブックなのです。オリンピックファミリーが典型例ですが、スポンサーやOBS関係者を含め自由な往来者が多すぎて、現場ではいちいち止めることができません。
その上、オリンピックファミリーのような特権意識の高い人たちに『プレイブックを守れ』というのは、平民が貴族にルールを守れと言うようなものです。組織委はIOCの下請けみたいなものですから、抗議の声が届くわけがありません。
喫煙一つとってもそうです。プレイブックにはコロナ禍にあって喫煙を控えるよう書いてあり、競技会場は厳に喫煙を禁じています。IOCは『たばこのない五輪』を掲げ、東京五輪・パラリンピック組織委員会も競技会場の敷地内を全面禁煙とする方針をとっていました。来日したIOC幹部がたばこを吸ったので、担当者が会場内は禁煙ですと言ったら、一喝されて終わったと」
これほどまでにバブルが崩壊した状況でありながら、五輪開催中、関係者から出た感染者数は500人弱。心配されていた選手村でのクラスターは起きなかった。
「ただ、運が良かっただけです」