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「言葉」という武器とともに決戦に挑む

 そんな指揮官が率いるヤクルトが6年ぶりのセ・リーグ制覇に向けて熾烈な戦いを繰り広げている。これからの一戦、一戦はとても重要な意味を持つ。ここにきて、高津監督はさらに意識的に「言葉」を操っているように思えてならない。

 先日、9月7日の試合前ミーティングの様子が球団公式YouTubeにて公開された。そこでは、現役時代の高津監督も大活躍をした1993(平成5)年日本シリーズ第7戦試合前に行われた野村克也による「結局、勝負は時の運だ」という言葉を紹介し、最後にこんな言葉を選手たちに送っている。

「オレたちは絶対大丈夫だ。絶対崩れることはない。絶対大丈夫、僕らは崩れない!」

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 実に力強い言葉だった。勝負の9月が訪れて、高津は「言葉」という武器を意識的に使い始めたのだ。監督に、この言葉の真意を聞いたことがある。

 まずは「勝って浮かれることなく、負けてしり込みすることなくあろう」ということを伝えたかった。その上で「常に前向きに予習をして復習をして、明日も頑張ろう」ということを伝えたかったんです。その思いを込めたのが「絶対大丈夫」という言葉で、僕なりの表現になりました。

 このミーティングについての質問が続いた後、改めて「言葉の重要性について、どう考えているのか?」と尋ねた。このときの高津監督の言葉が実に印象深い。彼は何のためらいもなく、こう言い切ったのだ。

「野球人・高津臣吾」の大半は言葉でできていると言ってもいいと思います。

 この言葉を聞いて、それまでのインタビューで直接耳にしてきたこと、昨年の開幕時にファンに向けて直筆メッセージをしたためたこと、そして公式YouTubeにおいて選手たちを前に力説していたこと……。すべてのことが一つにつながり、以前から感じていた「高津臣吾は言葉の人である」という思いが、さらに強固となった。

 言葉は武器であり凶器であり、意識して使わないといけないんだと思います。残り30試合を切った今だからこそ、その思いは強くなっています。

 高津監督が常々口にしている「チームスワローズ」の闘いは、いよいよ佳境を迎える。監督が言うように、言葉は武器だ。最大の戦力となり得る。個々の選手たちの奮闘の陰に、そしてファンの熱狂の陰に、高津臣吾の言葉がある。さぁ、本当の勝負の時期が訪れた。今一度、監督の言葉を思い出そう。僕らは絶対大丈夫、僕らは絶対崩れない――。

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