昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

僕らに背中を押されたがっている “有言実行”ヤクルト・村上宗隆の言葉力

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/09/11

「村上の言葉」には、僕らを鼓舞する力がある

 9月3日、東京ドームで行われた対広島東洋カープ戦。ヤクルトは塩見泰隆の初回先頭打者ホームランで先制し、3回の満塁の場面では村上宗隆がタイムリーツーベースヒットを放って3対1で勝利した。試合後、お立ち台に上がったのは村上だった。ヒーローインタビューにおいて、彼はこんな言葉を口にした。

「チャンスでなかなか打てなかったので、ファンのみなさんの“チャンスで打てよ”という声が自分の中で聞こえていましたし、何とかチャンスで打ちたいなと思って打席に入りました。(中略)僕たちは常に全力疾走、全力プレーを心がけてやっています。その背中をたくさん押してくれたら、僕たちも嬉しいです。たくさん押してください」

 東京ドームの片隅で村上の言葉を聞きながら、僕はひそかに感動に打ち震えていた。これまでに、村上のヒーローインタビューを聞くたびに、「彼は言葉を持っている人だな」「彼の言葉には力があるな」と思っていたのだけれど、このとき改めてその思いを強くした。と同時に、「あっ、あのときと同じだな」と思った。

 これまで、村上には2度ほどインタビューをした経験がある。1度目は、コロナ禍が本格化しつつある、昨年の開幕前のことだった。このときはまだ対面取材が可能な時期だった。無観客でのオープン戦を終えて、身体がひと回りも、ふた回りも大きくなっているように見えた。プロ3年目、20歳になったばかりの彼はこんなことを言った。

「自分がチームを引っ張るんだという思いは去年も持っていたけど、今年はその思いがさらに強くなっています。もちろん四番を打ってチームの勝利に貢献したいという思いはあるけど、自分の与えられたポジションで自分の力を発揮するだけ。バレンティン選手の穴を埋めるのは僕だと思っています」

 目の前で、淡々と、訥々としゃべり続ける村上の姿を見て、「頼もしい男だなぁ」と畏怖しつつ、その圧倒的な存在感に、ヤクルトファンの一人として、心からの信頼感、安心感を覚えたものだった。さらに、村上はこんな言葉も続けた。

「年齢だとか年数というのは、プロの世界で試合に出ている以上は関係ないことだと思っています。だから、“自分はまだ何年目だから……”という甘えを持つことなく、自分がチームを引っ張って、勝利に貢献したいという思いは変わらずに持っています」

 インタビュアーは常に冷静沈着である。もちろん、このときも平常心を保ちつつ、村上との問答を繰り返した。……ウソだ。間違いなく、この瞬間の僕はニヤニヤと気味の悪い薄笑いを浮かべていたはずだ。平静を装うことすらできないほど、「村上の言葉」は、僕の耳に心地よかったのだ。

村上宗隆

「もう押さなくてもいいですよ」と言われるほど背中を押したい!

 9月3日のヒーローインタビューを聞いて、「あっ、あのときと同じだな」と感じたのは、実は1度目のインタビューのときにも、村上は同じフレーズを口にしていたからである。以下、引用したい。

「いつ開幕できるかはわからないけど、必ず開幕できる日は来ると思っているので、僕たちはそれに合わせて、身体と気持ちをしっかり調整してベストな状態で開幕を迎えます。ファンのみなさんも開幕を迎えたら、ぜひ球場で僕たちの背中を押してほしいです」

 お気づきだろうか? ヒーローインタビューでも、僕がインタビューしたときも、いずれも「背中を押してほしい」と言っているのである。村上は、背中を押されたがっているのだ。ならば、「もう押さなくてもいいですよ」と言われるぐらい、村上の大きな背中を、どんどんどんどん押しまくってやろうじゃないか。コロナ禍により、大声での声援は送れなくても、ファンの熱い思いは、必ずや彼に伝わるはずだから。

 そして、2度目のインタビューは東京オリンピック直前の今年7月に行われた。発表媒体は『週刊SPA!』(8月3日号掲載)、担当編集者は遠藤修哉。そう、文春野球ヤクルトの遠藤監督である。もちろん遠藤監督の発案でスタートした企画である。

 1度目のインタビューと異なり、このときは完全リモートでの取材となった。直に村上の息吹を感じることはできないけれど、直接、薄ら笑いを見られる心配もない。このときは、目前に迫った東京オリンピック、侍ジャパンについての話題が中心だった。

「侍ジャパンの錚々たるメンバーの中で、《日本を引っ張っていく自覚》はありますか?」と質問する。その質問に答える口調に迷いは何もなかった。

「試合に出る以上、そういう責任はあると思います。普段、ヤクルトの四番は僕で、チームの中心だと思っています。“若いから”という甘えはないですし、それが普通だと思います。当たり前のことです」

 なんて、惚れ惚れする言葉だろう。もちろん、僕は感動のあまりニヤニヤが止まらない。あぁ、リモート取材で、本当によかった。