集合住宅にデザイン性を取り入れる試みは画期的
1964年に誕生した明治神宮前に建つビラ・ビアンカは、集合住宅にデザインを取り入れた画期的な試みだった。ガラス張りのキューブが積み重なった外観は目を見張り、その前衛的なデザインは60年経った今も時代を感じさせない。
さらに、「日本のガウディ」と称される建築家、梵寿綱(ぼん・じゅこう)によるマンションには、至るところに彫刻やモザイクが施され、どれも芸術作品のようだ。空き部屋が出れば瞬く間に埋まり、長く住む人も多い。ひと目見るだけで誰もが釘付けになる、憧れの住まいだ。
また、つい先日、取り壊しが決定した中銀カプセルタワービルも、デザイナーズ物件のひとつだ。1972年、黒川紀章によって世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅は、長年保存か解体かが議論され、根強い人気を誇っている。
いずれも個性的なデザイナーズ物件は多くの人々を魅了し、現在も物件数は増え続け、人気を博している。
忘れられない「デザイナーズ団地」
そこで今回は、数あるデザイナーズ物件の中から、私の記憶に残るひとつを紹介したい。
岐阜県の南西部に位置する小さな町、北方町は、岐阜県内の市町村の中で面積が最も小さい町だ。岐阜市に隣接し、街の中心部まで車で20分というアクセスの良さから、1万8000人が暮らす人口密度の高いベッドタウンだ。
街の周りを走るバイパス沿いには、紳士服店、ホームセンター、葬儀場、コンビニ、ファミレス、ガソリンスタンド…といった、いわゆるロードサイド店舗と呼ばれる、広い駐車場を持ったチェーン店が建ち並ぶ。交通量の多い幹線道路から交差点を曲がると、今度は静かな住宅街が広がっている。どこにでもある郊外のありふれた街並みに突然、一際目を引く圧倒的な存在が現れる。
ハイタウン北方だ。
1960年代に建てられた県営団地の建て替え事業によって、2000年に誕生した。