姉の上白石萌音にとって、初の主演連続ドラマ『恋はつづくよどこまでも』が俳優として大きな意味を持つ作品となったように、映画『子供はわかってあげない』は、妹の上白石萌歌にとってここまでの代表作となる作品かもしれない。

 『恋つづ』は、すでに多くの作品でバイプレイヤーとして確かな演技を見せていた上白石萌音を、主演女優としてスターダムに押し上げた。上白石萌歌もまた、『義母と娘のブルース』『大河ドラマ いだてん~東京オリムピック噺~』『3年A組-今から皆さんは、人質です-』『教場II』などの話題作で心に残る助演を見せてきたし、舞台ではミュージカル『赤毛のアン』『魔女の宅急便』や舞台『ゲルニカ』などで10代から何度も主演の重責を果たしてきた経験もある。

 だが、小学生のころに浜辺美波や姉の上白石萌音とともに短編連作で主演した『空色物語』をのぞけば、劇場映画としてはこの『子供はわかってあげない』が、俳優として自分の意志で歩き始めてから初めて背負う主演映画となる。

ADVERTISEMENT

*以下の記事では、現在公開中の『子供はわかってあげない』の内容が述べられていますのでご注意ください。

役の体重を合わせるストイックさ

 この映画のクランクイン前、上白石萌歌は沖田修一監督に「この役のためなら髪も切るし日焼けもする、体重も太りも痩せもする」と決意を語ったという。

 映画やドラマの中で登場人物の日焼けを表現する時、今の技術ならファンデーションで本物の日焼けそっくりにメイクをすることは可能だ。実際に肌を焼くことは他の作品への出演にも響くし、若いとはいえ肌へのダメージも大きい。だが上白石萌歌は実際に日焼けサロンに通い、本物の日焼けで撮影に臨んだと語る。

『いだてん』で前畑秀子を演じる上白石萌歌 ©共同通信社

 本物なのは肌だけではなく、体型も同じだ。この『子供はわかってあげない』は2019年に上白石萌歌が前畑秀子を演じた大河ドラマ『いだてん』の直後に撮影されている。オリンピックの放送などで見た人も多いと思うが、水泳の女子選手の体型には独特の特徴がある。比重が軽く水に浮く脂肪は水泳競技で必ずしも不利にならないので体重は無理に落とさず、広い肩と強い腕を作る。モデルやアイドルが求められるスレンダーな体型とは明らかに違うのだ。

 上白石萌歌は『いだてん』で五輪選手の前畑秀子を演じるために体重を7kg増やし、『子供はわかってあげない』ではその体型を水泳部員の女子高校生に合わせるために再び減量して調整した。単に脂肪の増減だけではなく、実際に水泳が得意で「平泳ぎなら永遠に泳いでいられる」と自信を持つ上白石萌歌の肩から上腕にかけては、水泳で使うリアリティのある筋肉がついている。