「ロダン没後100年の今年、彼の逸話を集めた本が多く並ぶでしょう。しかしそれで彼の本質に到達できるのか。私にとっての興味は、ロダンとは一体“誰”なのか、です。主観的な表現は危険かもしれません。でも彼が制作したあのバルザック像のように、ただ顔つきを似せるのではなく、魂を表現することこそが重要だと考えました」

 近代彫刻の父と称されるオーギュスト・ロダン。ジャック・ドワイヨン監督は、芸術家として世に出た40歳からの姿を映画『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』に描いた。

「独学で彫刻を身につけた彼に、建設計画が不確定で制作費も安い美術館のモニュメント作りが依頼された。それは後の代表作『地獄の門』誕生と立身に繋がる奇跡でした。彼の作品は賛否を呼びつつも、抗いがたい力を宿しており、やがて名声を高めたのです」

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 監督が掴んだロダン像は、どのようなものだったのか。

「美しいものを前に、彼は指先で思索し、魂に触れようとしたのです。そして粘土をこねながら考察を重ねた。ロダンは野性的で、触覚の人でした。情熱を交わした弟子のカミーユと、生活の世話をした内妻ローズ。正反対の女性にも補完されながら、素晴らしい作品を残していったのです」

INFORMATION

映画『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』
11月11日より新宿ピカデリーほか全国順次公開
http://rodin100.com/