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《厳選写真》死者を担いで踊る奇習、幽霊が蘇らせた小さな村の廃教会…各地を巡る写真家が目にした“奇妙すぎる世界”

2021/09/29

genre : エンタメ, , 歴史

「奇妙な想像力」がつくりあげたこの「奇妙な世界」。奇界、そこは狂気が正気と呼ばれるところ――。

 TV番組「クレイジージャーニー」への出演でも注目を集めた佐藤健寿氏は世界各国を訪れ、さまざまな「奇界」を撮影している写真家だ。ここでは、同氏による人気写真集シリーズの最新刊『奇界遺産3』(エクスナレッジ)の一部を抜粋。にわかには信じがたい奇妙な光景の数々を紹介する。

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珍建築一帯一路のファイナル・フロンティア

マトリョーシカ・ホテル 中国/内モンゴル自治区

 中国、内モンゴル自治区の最北部にある満州里は、中国とロシア、さらにモンゴル国境まで交錯する三国国境の街。かつてはソ連支配下にあったため、住民はロシア系やウイグル系が多く、町には今もロシア風の建築が溢れる。そんな素敵な街外れの荒野に、2017年、中露コラボの最終兵器というべき物件がオープンした。

メインのホテル棟となる巨大マトリョーシカ。円筒形の建物をマトリョーシカ型の鉄網で囲い、この構造を実現している。 ©佐藤健寿

 その名もずばりマトリョーシカ・ホテル(套娃酒店)である。高さ72m、マトリョーシカよろしく内部は空洞で、1千部屋を超える客室が円筒形の壁面に沿って配備されている。ファンシーなのは見た目だけでなく、調度品やアメニティまで徹底的にマトリョーシカをフィーチャー。外壁もマトリョーシカ鉄網で覆い、館内吹き抜けには24時間、7色に変化する膨大なマトリョーシカ形ランプを設置する凝りようである。当然のように「世界最大のマトリョーシカ」というライバル不在の記録をギネスに刻みつつ、周囲には世界2位、3位となるべき中型マトリョーシカ群を続々と増設している。

館内は中央が吹き抜けで周囲に部屋が並ぶ。扉から通路に至るまであらゆるところにマトリョーシカはいる。 ©佐藤健寿

 昨今はロシア人観光客が増加し、その需要を見越しての建設というが、異国を訪れたロシア人にカウンターパンチを放つように、なぜロシア文化を見せつけるのかは謎である。でもそんな破竹の勢いこそが中国の本領であり、訪れたロシア人も思わず勢いに押され、自国で見飽きたマトリョーシカに泊まってしまうのだろう。まさに珍建築一帯一路。その最前線が今ここに拓かれているのだ。