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死者を担いで踊る、マダガスカルの奇習
ファマディアナ マダガスカル/中央高地
アフリカ南東部、西インド洋に浮かぶ島国のマダガスカルは、固有の自然と、独特の進化を遂げた奇妙な動物たちの宝庫。人々の文化もアフリカ大陸側とは趣を異にし、不思議な風習が今も多く残る。中でも奇妙なものが、農村部で行われる「死者を掲げる儀式」、ファマディアナである。
ファマディアナは毎年夏、呪術師が定めた日程で行われる。まずは前日、遺族や親族、近隣住民ら数百人が集まって歌や踊りも交えた会食パーティーを開催。当日になると、大掛かりなバックバンドを従えた参加者たちが故人の遺影を掲げ、長い行列となって墓地へとパレードする。やがて墓にたどり着くと今度は男数人がかりで家形墓地の扉をこじあけ、中から故人の遺体を運び出すのである。遺体はまるで神輿のように掲げられ、墓地の周りを何度か回ったのち、皆で布を丁重に巻き直して墓へと戻し、儀式は終了する。正直にいえば、私は実際にこの儀式を見るまで、一体どんな衝撃の光景が待っているのかと思っていた。ところが実際に目にしたのは、死後何年経っても故人を思う、世界でも類を見ないほど心のこもった改葬儀式だったのである。
とはいえ、この儀式は大陸側では見られないもので、起源には謎が多い。一説にはインドネシア、トラジャ族の改葬儀式(『奇界遺産2』収録)とも似ていることから、遥か古代、儀式もろともインドネシア人が持ち込み、彼らがマダガスカル人の祖先になった可能性が有力視されている。