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 まず誓約書の内容を見てみよう。謳われている項目は10項目にも及ぶ。なかでも興味深いのが「立ち見、立張り、またはベットの相乗り、口張り、キャッチボールなどの行為を一切禁止させて頂いております」という一文だろう。

誓約書の実物

 立ち見、立張り、またはベットの相乗り、口張りといった行為は、カジノ内をフラフラしながら、勝てそうと思ったテーブルや客につき飛び込みで賭ける行為だ。フラフラしながら突然ギャンブルに参加するのでテーブルの雰囲気が悪くなることが多く、他の客が負けた場合は客同士のトラブルにもなりやすいので禁じているのだという。

 一方でキャッチボールをは客同士がグルになって両賭けする行為。二人で組んで両賭けすれば、どちらかが勝ち、どちらかが負けるのでトータルでは負けることはないという計算のもとに行われる。入店した客には店から10万円分のサービスチップが提供される。サービスチップはそのままでは換金できない。そこで客はキャッチボールを行い遊び、サービスチップをロンダリングして普通のチップにして換金しようとするのだ。

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「一回だけドーンと張って逃げる客や、キャッチボールをする客は基本的に出禁です。まずは腰を据えて遊んでください、というのが闇カジノの基本ルールです」と漆原は語る。

 つまり闇カジノ店と客は騙し騙されの関係にあることを文面は示唆していた。

実際の店内でバカラをプレイしている様子

「バカラとスロット両方やる」「熱くなると$200~300張る」

 ファイルをよく眺めていると、裏面に顧客の特徴についてメモ書きが残されていることに気が付いた。

 例えば<クールブースト 5mm 30代 メガネ 色白 黒髪短髪 バカラとスロット両方やる>、<アイコスメンソール 40代後半 メガネ 浅黒い肌 西川口の客 小者$30~100BET 熱くなると$200~300張る 中国人>といった具合である。

顧客の特徴についてもメモが残されていた

 闇カジノでは酒、タバコ、飲食などが無料で提供される。「クールブースト」「アイコスメンソール」などは客の嗜好を記録したもの。そしてギャンブルの好みなども「バカラとスロット両方やる」、「熱くなると$200~300張る」という形でメモされている。

 顧客の詳細について記したそれを見ると、映画などで見た賭場の豪快なイメージとは実際は違うことを感じる。アングラ社会で揉まれながら闇カジノは裏ビジネスとして先鋭化して行った様子が垣間見えた。

 気になったのは、メモ書きに残された「小者」という文字だった。読み方は「コモノ」ではなく「コシャ」だという。これは客層を示す隠語なのだという。

 では、闇カジノに集うのはどのような人間なのか。次回はギャンブルに熱を上げる人たちのタイプについて解説を加えていきたい。