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 だから、過度なエイジング対策や整形を嫌いました。白髪を染めることもしていませんでした。綺麗な顔や若さを作りこむと、その人なりの個性が消えてしまうからです。

「眉毛をいじっては絶対だめだよ」と盛んに言っていた理由

 さまざまな人生を演じる役者を生業としないのであれば、各々の価値基準にしたがって、いくらでも顔や体をいじればいい。ただ、役者であろうがなかろうが眉毛はいじってはだめだと盛んに言っていました。

「眉毛というものはね、陰でその人の顔を表すものなんだよ。その人なりの表情を作ってくれるのに、細くしたら、台無しじゃない? みんな同じ顔になっちゃうよ」

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 希林さんの教えを守り、思春期にも大人になってからも眉毛をいじらなかった也哉子ちゃんは、ナチュラルに美しい大人の女性になりました。私は若い頃、教えを無視してさんざん眉毛を剃ったり抜いたりしてしまいました。自前の眉毛に戻そうとしたのですが、元の通りには生えてくれません。とても後悔しています。

ひとりじめ』17歳でのデビュー以来、著者の人生の傍らにはつねに希林さんがいた。はじめて明かす、涙と笑いに満ちた日々。文藝春秋 1,760円

 也哉子ちゃんといえば、彼女は希林さんの方針で幼い頃からおコメは玄米で育ちました。ところがある日、お友だちの家に遊びに行った際に白米のご飯が出たのです。家に帰った也哉子ちゃんが興奮気味に言ったそうです。

「お母ちゃん、白いご飯ってとってもおいしいね」

 これには希林さんも参ったようで、それからは時々、白米を炊くようになりました。

『さんまのスーパーからくりTV』で思わぬブレイク

 さて、離婚の少し前から仕事に復帰した私は、92年にドラマで明石家さんまさんと共演したことで思わぬ道が開けました。まもなくバラエティー番組の『さんまのスーパーからくりTV』(TBS)から声がかかり、それから22年間、この番組でさんまさんにいじられ、天然キャラの代表のようになっちゃいました。さんまさんがよくネタにしていますけど、私が「今度の火曜日って何曜日だっけ?」と言ったというのは本当の話なんです。

 希林さんも「新しい時代に乗れたじゃない」と喜んでくれました。トーク番組『さんまのまんま』(フジテレビ)にも、ただ「浅田美代子がお世話になりました」とお礼を言いたいがために出演してくれました。

 また、番組のスタッフに山田洋次監督のお嬢さんがいて、監督が毎週番組をご覧になっていた。それで私を映画『釣りバカ日誌』の西田敏行さんが演じる主人公ハマちゃんの妻みち子に指名してくれたんです。

『釣りバカ日誌』出演のきっかけは『さんまのスーパーからくりTV』©共同通信イメージズ

 残念だったのは、私が復帰した時、『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』の演出・プロデューサーであり、希林さんの朋友であった久世光彦さんが希林さんと絶縁状態にあったこと。希林さんは、久世さん演出で希林さんも出演したドラマの打ち上げの席で、出演していた若手女優と久世さんの不倫を揶揄するスピーチをしたのです。それが原因で久世さんはTBSを退社し、2人の仲は決裂しました。

 希林さんは不実が許せない人でした。どれだけ親交が厚くても、人の道に反することを行った人を認めないし、希林さん自身も人の道というものを守る。私が人生で出会った誰よりも正義感が強く、根っからまっとうな人でした。