さらに、記名式の回答を読んだ信太郎さんが、無記名のアンケートを要望。23日に実施した。その結果、いじめの加害者の実名が書かれていたものの、学校や市教委はいじめについて詳細な調査をすることなく時間だけが経っていった。市教委の調査では、学校内の人間関係や、部活動での肉体的、精神的疲労などを自殺の原因としていた。
「学校や市教委の調査では、はっきり『いじめ』とは出てきませんでした。加害者とされる子も『いじめ』と思ってないのです。でも、遺族のために理由をつけないといけない。調査では、部活の問題が出てきましたので、『部活にしよう』となったんでしょう。もちろん、本人の気持ちはどうだったのかわかりません。でも、死んでしまうと、権利擁護の議論はしないんですね。調べないんです」(高原さん)
再発防止の研修も形式だけ
名古屋市に「子ども応援委員会」が設置されるきっかけになったのは、2013年7月、名古屋市南区の中学2年生の男子生徒のいじめ自殺だった。その後も子どもの自殺は続き、15年11月、中学1年生の男子生徒が「ぼくは、学校や部活でいじめが多かった。特に部活が多くよく弱いなとかいろいろいわれていた でもたえきれない」(原文ママ)と遺書のような内容を書いたノートも見つかった。
「このときも、私は調査には関わっていませんが、やはり市教委の職員の立場でした。市教委の独自の調査でいじめを認定しています。本件は調査がスムーズで、部活内にいじめがあったことがわかりました。再発防止のために研修も行われました。しかし、形式だけで、効果的なものではないように思いました。教師の、子どもに対する態度が変わり、自殺防止ができる仕組みができないといけないと思いますが、私から見れば、何も変わっていません。子どもの自殺があると、個人の問題であり、家庭の問題であるという認識が強いように感じました。そんな中で、華子さんの自殺が起きました」(同前)
提言をし続けても素通り
高原さんなりに、いじめ対策などの改善についてのアイディアを提言することもあった。
「ING(いじめのない学校づくり)キャンペーンをしていますが、それだけではいじめはなくなりません。何か、大きな取り組みをしないといけないと思っています。私は7年間、提言をし続けてきましたが、素通りでした。何も変わっていません。ときどき回答がありますが、『ちゃんとやっています』というものだけ。学校の取り組みや教師の子どもに対する接し方が変わっていないので、私から見れば、『やっている』とは言えません。変わって初めて『やった』と言えるのです」(同前)