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ぶら下がり取材で河村市長は「学校教育側の原因ではない」

 21年8月6日、河村たかし市長と鈴木誠二教育長が一緒に、齋藤さん宅を訪れて謝罪した。その後、河村市長と鈴木教育長は記者たちのぶら下がり取材に応じた。入手した情報によると、記者から「なぜ意思疎通ができていなかったか?」と聞かれた際、河村市長はこう答えている。

「教育長は言い難いだろうから僕から言っておくと、学校教育側の原因ではないと。こういうふうに、早いところからですよ。これは大変言いにくいけど、そういうステップがあるんです」

 改めて記者から「事実ってことなんですか? それとも推測ですか?」と問われ、河村市長は「ほとんど事実です。はい。複数から聞いております」と述べている。

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 河村市長の発言通りなら、「学校教育側の原因ではない」ということが、市教委、もしくは周辺から市長に伝わっていることになる。転校したばかりの華子さんの自殺の原因が、「学校教育側」以外の要素となると、個人的な問題か家族の問題とされてしまうのは、不思議な流れではないだろう。結果として、“家庭の問題”とされて地域に噂が流れるのは時間の問題だった。

亡くなった齋藤華子さんと父親の信太郎さん(齋藤信太郎さん提供)

調査前から“家庭の問題”というバイアスがあった?

 信太郎さんは「“家庭の問題”という噂は初期からあったようです。その後に支援してくれている方に聞きました。時期は正確にはわかりませんが、娘が亡くなって間もない時からだと聞いています」と話している。

 正式な調査を行う以前に、“家庭の問題”というバイアスがあったとすれば、調査の信頼性を揺るがせる由々しき問題だ。

 名古屋市教委指導室に確認すると、「指導室長を含めて、市教委の職員一人ひとりはどう思っていたかはわかりませんが、少なくとも、指導室が組織として“家庭の問題”という断定的な見立てをしていたということはありません。何らかの個人の感想はあったかもしれませんが、指導室としての方向性、方針として申し合わせるという意味合いのことはありませんでした。また、市長に、“学校教育側の原因ではない”という情報があがったとしても、市長には、市教委以外にもルートがあります。ただ、市教委としては組織として、そうした報告をあげていない」とした。

 華子さんの死後、父親の信太郎さん(49)は、いじめの可能性を疑って、学校に調査をお願いしていた。4日後の始業式で、校長(当時)が、華子さんの自殺を全校生徒に報告した。保護者にも文書で伝えて、その翌日の1月10日、学校教職員にアンケートを実施。11日には、全校生徒に記名式でのアンケートを実施した。