集中する通学時間帯の学生と“ワンマン”対応
「基本的に車載型IC改札機は車掌の乗務しないワンマン線区での導入を前提としています。従来、ワンマン線区では後ろ乗り前降り、つまり後ろのドアから乗車して、前のドアから降りるときに運転席の横にある運賃箱に運賃を入れて降りていただく仕組み。車載型IC改札機を導入した線区でも、このパターンは同じです。車載型IC改札機には入場用と出場用があり、後ろのドアには入場用、前のドアには入場用に加えて出場用を置いています」(早田さん)
こう早田さんは話すが、これまた実際の現場ではさまざまなケースが起こりうる。ワンマン運転が行われているローカル線区では通学時間帯の数本の列車に学生が集中する傾向があるが、その場合には前から乗車する乗客も少なくない。
また、学校の最寄り駅では一度に大勢の学生が下車することになり、車内に1台だけの出場用改札機だけでは降車に時間がかかりすぎてダイヤ乱れの原因になってしまうのだ。
「そこで、そうした駅では駅にも出場用の簡易改札機を設けることで、車内・駅どちらの改札機にタッチしてもいいようにしています。1列車だけで100人降りるような駅もありますからね」(早田さん)
ちなみに、有人駅では車内の改札機ではなく都市部などと同じように駅に設けられている改札機にタッチする。そういった駅では車内の改札機は機能を停止しており、使用できなくなっているというあんばいだ。
あれ、「改札機が移動し続ける」ということは…
ここで気になるのは、車載型IC改札機は“移動する”ということだ。駅によってICカードから引く運賃額はもちろん異なる。となると、“いまどの駅か”を改札機自身が把握していなければならない。路線バスなどでは運転手が手動で切り替えているが、鉄道ではどうなのか。
「運転士にできるだけ余計な負担をかけず、安全安定の運行に集中してもらうという前提から、車載型IC改札機は自動で駅を切り替えるようにしています。使っているのはGPS。GPSを用いて緯度経度を取得し、そこからどの駅かを判断して切り替えています。
GPSですとトンネルに入った場合にどうなるのかとか、誤差が生じた場合はどうなのかという懸念もありますが、GPSを2台使うこと、さらにトリップメーターも合わせて活用してトラブルが起こらないようにしています」(片山さん)
こうしたテクノロジーの活用に加え発車前に運行データを設定、A駅を出発したら次はB駅、というデータを車載型IC改札機自身が持つことで、より確実な“駅の切り替え”を実現しているという。