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2021/10/09

source : 文春文庫

genre : ライフ, スポーツ, ライフスタイル, , 働き方, 読書

犬の目の前で排泄してやったら…

 この日、私と犬は人類と犬の進化史をさらに遡り、ある意味で始原の位置とよべそうな地点にあやうく到達しかけた。

 朝方(といってもずっと夜なのだが)、私はめずらしくテントの外に出て排泄行為をすることにした。私のテントの床にはマジックテープで開閉できる穴が開いており、普段はテントに居たままそこで脱糞するのだが、その日は風も無く穏やかだったので外で気持ちよくする気になったわけだ。

角幡氏とウヤミリック(犬)

 私はズボンを下げてお尻をペロンと出し、早速しゃがんで行為に取りかかろうとした。

 ふと背後を見やると、犬がネオテニー化した可愛い顔をこちらに向け、やけに熱っぽい視線を私の臀部に投げかけていた。

 ははーんと私はピンときた。ウンコを食いたいんだな。

 私の犬というか、これは犬族全般にあてはまることだが、彼らは基本的に人糞が大好物である。今回、私は犬の食料として1日平均800グラムのドッグフードを用意していたが、それだけでは足りなかったようで、犬は私がテントを撤収するとき、いつも脱糞口のあたりに駆けよって、ガチガチに凍った雪をほじくり返してブタのようにばふばふとがっついていた。犬が旨そうに糞を喰らう様子を、私は毎日、その食いっぷりに惚れ惚れとしながら眺めていたので、このときはその視線に気付いてすぐにははーんと察知したのだった。

 というより正直に告白すれば、私がこの日、わざわざ外で用を足したのは、犬の目の前で排泄してやったら、一体どんな反応を示すのか見てみたかったからだった。犬の期待で潤んだ視線をビリビリと感じながら、その気持ちに応えてやろうと私は盛大に肛門から排泄物を放出した。