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200万円を受け取っていた警視長

 捜査員を沈黙させたのは、A警視長だ。

 京都大学法学部を卒業後、1995年に警察庁に入庁し、北海道警の公安第一課長や神奈川県警の外事課長を経て2011年には40歳を前にして島根県警のナンバー2たる警務部長に就任している。

 この経歴を見ると、大規模県警の警備・公安畑の課長職を歴任し、組織内で将来を嘱望されたエリートだったことがわかる。

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 そんな人物のキャリアに影が差しはじめたのは2015年11月。A警視長は、警視庁交通部の総務課長の任にあった。交通関連機器を扱う業者らとの会合に出た際、その席で、交通安全のための反射材などを扱っていた会社の女性社長と名刺交換をしたのをきっかけに交際をはじめた。そして、妻と3人の子どもがいる身でありながら、12月には不倫関係を結ぶようになっていた。

 その後、食事、デート、ホテルと逢瀬は続いた。費用は女性が負担した。A警視長は、密会の折には、女性の下着やストッキングを頭にかぶったり、靴の匂いを嗅いだり……。

写真はイメージです ©iStock.com

 その様子は写真誌『フライデー』に掲載され、白日の下に晒されることになる。2017年2月のことだ。記事の中で女性は、飲食代やホテル代金のほかに、A警視長がタクシーで帰宅する際は毎回、現金2万円を渡すなどしていたとし、総額200万円以上も提供したと証言している。

不倫相手に機密漏洩や便宜供与も

 また女性は、ホテルなどでの逢瀬の際に、警察庁内の不祥事や、伊勢志摩サミットに向けての警察庁の警備方針が書かれたノートを見せられたことも明らかにし、機密漏洩の疑いを示唆した。

 だが、問題はこれに止まらなかった。当初、女性は公にはしていなかったが、実はA警視長の口利きで、警察からの仕事の発注を数多く受けていたのである。

 まずは2016年3月、警視庁池袋警察署主催で開かれた「親子で学ぼう! こうつうあんぜん」なるイベント。女性の会社は、実はタレント派遣や文具品の販売を主業にしていたのだが、このイベントはまさにそれに合致したもので、Sというアイドルタレントを起用して開催された。

女性の会社ホームページに掲載されていた「警視庁ノベルティノート」(現在は削除)

 そして、翌4月。警視庁のマークに加え、マスコットの「ピーポくん」のイラストを入れた「警視庁ノベルティノート」を制作。それから、同年6月には警視庁交通部と読売巨人軍とをコラボさせた「タックルバンド」を警視庁に納品している。