選挙特番はザッピングしながら、けっこう見入っちゃいます
―― 早稲田ではサークルには入られたんですか?
中村 結局は将棋部でした。でも僕はプロなので、大会とか出ちゃ駄目なんです。だから部員に将棋を教えたり、ご飯行ったり飲み会したりして過ごしてました。ただ、今思えば将棋以外のサークルに入りたかったって気持ちもあるんです。サークル見学は何個か行ったんですけどね。旅のサークルとか、謎のコーヒー研究会とか。早稲田には数えきれないぐらいサークルがあって、絶対活動してないだろ、みたいなところもあるんです。僕が覗いたコーヒー研究会も、コーヒー研究はしてない感じでした(笑)。まあ、他のサークルに入ってしまうと将棋がおろそかになってしまいそうで、我慢したんですが。
―― 授業はちゃんと出られてたんですか?
中村 1~2年生の頃は結構行ってましたね。1年生の頃とか、授業の取り方があんまりうまくなくて、必修科目がバラけて週6回通うことになっちゃって(笑)。4年生の時は単位をほぼ取り終わっていたので、将棋に時間を費やせたっていう感じです。
―― 論文で賞を取ったそうですね。
中村 いや、あれはゼミのグループで書いた共著論文なんですけどね。論文を出した人の中から普段の成績優秀者を表彰するような賞で、ありがたいことに返還しなくていい奨学金がもらえました。それで洗濯機を買いました(笑)。
――ゼミではどんな勉強をされていたんですか?
中村 政治学だったんですが、僕は無党派層の研究みたいなことをやっていました。なので選挙特番はザッピングしながら、けっこう見入っちゃいます。池上彰さんの選挙特番とか。
―― 最近、藤井聡太さんが高校に行くことになってニュースになっていましたけど、大学まで進学された中村さんとしては、将棋と学業の両立についてどうお考えですか?
中村 藤井さんはすでに本とか新聞もよく読んでるみたいですし、一般常識とか、見識的には全く問題ないと思うんです。けど、僕が大学に行って一番よかったなと思っているのは、友達がたくさんできたことなんです。今、一般企業でサラリーマンしてる人とか、早稲田で知り合った友達とは、今でも飲んだり、何かあったら連絡とったりしています。勉強するためだけに大学に行く必要はないと思うんですけど、かけがえのない友達を作ったり、将棋以外の世界を知るためには、高校や大学に進むことはいいことじゃないかな、と個人的には思います。僕の場合は、テレビの話もできる友達ができましたし(笑)。
◆テレビっ子新王座 棋士・中村太地インタビュー#1「国仲涼子さんがずっと好きです」http://bunshun.jp/articles/-/4878
◆テレビっ子新王座 棋士・中村太地インタビュー#3 「ロンハーの好きなところ、ですか?」 http://bunshun.jp/articles/-/4880
写真=杉山拓也/文藝春秋
なかむら・たいち/1988年東京生まれ。2000年に奨励会入りし、06年に四段となりプロ入り。2017年10月11日に王座戦で羽生善治を破り、初のタイトルを獲得した。早稲田大学政治経済学部卒業。テレビでは14年にNHK『NEWS WEB』でナビゲーターとしてレギュラー出演したほか、現在はEテレ『将棋フォーカス』の司会などでも活躍している。