20歳の葛藤「歌手か、女優業か、タレント活動か」
――“そこから先”について、20歳の頃はどんなことを考えていましたか。
鈴木 20歳に近づくにつれ、子どもから大人になって、アイドルからどう脱却していくのか。ずっと歌手としてやっていくのか、それとも女優業に進出するのか、タレント活動していくのか。私自身、「これだ!」という方向性がまったく見えていませんでした。
それまでは小室さんプロデュースのリリースが続いていて、息つく暇がないような日々で。でも20代の頃にいったん芸能活動をお休みさせていただき、じっくり腰を据えて自分に向き合えたあの3年間は、振り返ってみればいい時間だったと思います。
――プロデューサーだった小室哲哉さんとは、キャリアの話などをしたのでしょうか。
鈴木 小室さんは夜型でお仕事をされていたこともあり、当時高校生だった私とはなかなか生活時間が合わないんですよね。当時は小室ブームでもあり、歌番組のスペシャルとかでしか直接会う機会はありませんでした。
逆に大人になってからの方が私も普通に小室さんと接することができるようになったので、ふとお会いした時に昔話をするような感じです。「亜美はほんと子どもだったよね~」とか「いつも制服でレコーディングスタジオにいたね」とか。
――鈴木さんから見た小室さんはどんな方ですか。
鈴木 小室さんって、うちの親のひとつ上なんです。そういうこともあって、私はこの業界のお父さんだと思っています。怒られたり怖いと感じたことなんて一度もなくて、本当に優しくておっとりしている方で。あんなに忙しいのに喋るペースがめちゃくちゃゆっくりだから、取材が時間内に終わらないんじゃないかと、こっちがハラハラしちゃうくらい(笑)。多忙でもご自分のペースを乱さない方ですよね。
すごく嬉しかったのは、セカンドシングル『alone in my room』のジャケット写真を私に選ばせてくれたこと。写真が何枚か並んでて、「亜美はどれがいい? 僕はもう若い子の感覚がわからないから」と言って、私の意見を聞いてくれたんです。その時選んだのが、真正面を向いている写真じゃない、ちょっと横を向いてふくれっ面をしているような表情のものでした。そうしたら小室さんが、「これを選ぶセンスが僕にはもう分からないんだよ」と話していたのが印象に残っています。