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「魔王のマントについたワインのシミを落とす薬剤は……」 “洗濯のしくみ”が詰め込まれたマンガ『鬼桐さんの洗濯』が“鬼”を主人公にしたワケ

ふかさくえみさんインタビュー#1

2021/09/30

 花王アタック公式Twitter、洗濯王子こと中村祐一さん、洗濯ブラザーズさんなど、「洗濯のプロ」が認める本格洗濯マンガ『鬼桐さんの洗濯』。鬼のクリーニング店主をはじめ、魔王やバンパイア、妖怪など「人ならざる」キャラクターが登場する、ファンタジーなお仕事マンガです。どんな汚れも落とす「洗濯屋鬼桐」の魅力を、作者のふかさくえみさんにお聞きしました。(全2回の1回目。後編を読む)

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クリーニング店を漫画の舞台に決めた理由

──なぜクリーニング店をテーマに作品を描こうと思われたのですか?

ふかさくえみ(以下、ふかさく) 前作『今日のノルマさん』もですが、それまで学園モノを描くことが多かったので、次はお仕事モノに挑んでみようってなって。衣食住のどれかに関係ある仕事がいいなと思ったのですが、「食」はすでに多くの方が描かれているので、「衣」で、でもファッションやデザインではなく、「洗う」方が日常的でも科学的でもあって自分に合っている気がしたので、クリーニング店を舞台に決めました。

ふかさくえみさん

 服を着る限り洗濯は一生必要で身近なもののはずなのに、あまり深く考えることはなかったなって思って。クリーニング屋さんの仕事もずっと謎だったというか、企業秘密が多そうなイメージなので調べるのは難しいんじゃないかな?と思いながら、興味だけはあったんです。

 もともと私は、人間以外のいろいろな種族をキャラクターとして、少し普通ではない日常を描くのが好きなんです。なので、「人ならざる」登場人物たちが、どんな衣服を着て、どんな汚れに悩んでいるかを描いたらすごく面白いのではないかと妄想して、一気にプロットを描き上げて担当さんに“プレゼン”しました。

「こんな感じで描きたい」と提案したらすぐに連載に

──担当さんは、はじめはあまり乗り気ではなかったそうですね。

ふかさく そうなんです、反応が薄かったんですよ。でも、「洗濯をテーマにした、ファンタジー系のお仕事マンガ」と言われても、想像つかないですよね(笑)。なので、わーっとネームを描き上げて「こんな感じで描きたい」と提案したらすぐに連載が決まったので、ホッとしました。

「洗濯をテーマにした、ファンタジー系のお仕事マンガ」と聞いた担当編集者の反応は、当初薄かったという

──1巻の第1着「魔王のマントはワインの香り」(試し読みはこちらでは、ワインの成分や漂白剤の種類別特徴などが詳しく解説されています。専門知識を織り込むことは、最初から考えていたのですか?

ふかさく はじめはここまで本格的にするつもりはありませんでした。でも、「ファンタジーなのに技術や使われている用語が本格的」というほうが面白いと思って、調べ始めたらのめり込んでしまいました。