子狐のアサとキヌもいるとその空間が和むので、気がつくと登場シーンが多くなっています。単行本の装丁をして下さっている小石川ふにさんもアサ・キヌ好きと聞いて嬉しくて、今のところカバーには毎回入れてしまいますね。あとお客さんではない人だと運び屋の箱舟さんが得体が知れない感じで好きなんですが、鬼桐さんにとって大事な仕事仲間のひとりなので、ふたりの関係ももう少し深い部分まで描ける機会があったらいいなと思います。
名前のこだわり…考えるだけで1日が終わることも
──名前もすごく凝っておられますよね。
ふかさく 名前を考えるだけで1日終わっちゃうこともあります。ゲストでもできるだけ名前はつけたいんですよね。遊び心もほしくて。
「茶子」はお茶が「おにぎり」に合うというのはもちろんですが、「チャコペン」からもとっていて。初期の設定では、洗濯や衣類に関連したネーミングのキャラを色々出そうと思ってたんですよね。名字の「柊木」は、節分に鬼除けとして使われる柊をあえて持ってくることで二人の関係性を想像させたいという意図がありました。そもそも鬼桐家は人間を嫌ってたし、はじめから仲良しなのが確定ではない感じにしたかったというか……。トキエさんの名字に、魔除け・厄除け効果があると言われる「黒豆」をあえて持ってきたのも、同じ理由です。
ささめちゃんの名字は、しんしんと降る雪のイメージで「深森」、名前は「細雪」からつけました。苺坂ぱせりさんの名字は、血の赤いイメージと可愛いイメージから「苺」がつく語呂がよさそうなものにしました。名前の「ぱせり」は鉄分豊富で、貧血に効くイメージです。
これからは社会人としての茶子の成長も描いていけたら
そして、子狐の「アサ」と「キヌ」のコンビは、文字通り「麻」「絹」からとっています。鬼桐さんは、「鬼」って怖そうな字が入ってるのに名前はおにぎりの具になっていてかわいい、という感じにしたくて一族もその法則になっています。
──名前だけで相関図が見えてくるようです。連載が進むにつれて登場人物が年を取っていくのは、設定を少しずつ明らかにしていく狙いでしょうか?
ふかさく 学園モノだと3年で卒業を考えないといけないので、うかつに年を取らせるとあっという間に卒業して話が終わってしまうんですけど、今回はクリーニング屋が舞台で、登場人物たちも何百年も生きる種族が多いので、気兼ねなく時間が動かせる、成長が描けるという思いがありました。当初は「茶子が大学卒業する前に連載終わっちゃうのでは」という弱気な部分もあったんですが、おかげさまでその先も描かせていただくことができて、本当にありがたいです。これからは社会人としての茶子の成長も描いていけたらと思っています。
(取材・構成:相澤洋美、撮影:杉山秀樹/文藝春秋)
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