花王アタック公式、洗濯王子こと中村祐一さん、洗濯ブラザーズさんなど、「洗濯のプロ」が認める本格洗濯マンガ『鬼桐さんの洗濯』。鬼のクリーニング屋店主をはじめ、魔王やバンパイア、妖怪など「人ならざる」キャラクターが登場する、ファンタジーなお仕事マンガです。国家資格にチャレンジしたり、国会図書館で洗濯に関する古文書を読み解くなど、貪欲に「洗濯」を学び続ける、作者のふかさくえみさんに話を聞きました。(全2回の2回目。前編を読む)

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高3までは工学系を目指していた

──花王アタック公式Twitterの中の人が推薦文で「参考文献がガチすぎやしないでしょうか?」と書くほど、洗剤の種類や汚れを落とすメカニズムなどの専門知識が豊富に紹介されています。化学や薬学などを専門的に学ばれたご経験がおありなのですか?

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ふかさくえみ(以下、ふかさく) 高校3年生までは、ガッツリ理系だったんですよ。工学系を目指していたのですが、高3の秋に突然進路を変更して芸術系に進学しました。専門知識があるというほどではないけど好きな分野ではあったので、改めて勉強するのにあまり抵抗がなかったという感じです。

ふかさくえみさん

洗濯って思っていた以上に化学の世界

──3巻の帯裏に「シミ抜きは化学だ」と書かれています。洗濯と化学の共通点は何だと思われますか?

ふかさく 私は洋服にも気がついたら食べ物のシミやインクの汚れがついていることが多くて、落とそうとしても失敗する方が多かったんです。なのであえて汚れてもいい服や、捨てても惜しくない服を選ぶようになっていました。でもずっとそのままでいるのもなんか悔しいな、という思いはありまして。

ハンドメイドが得意で、「鬼桐さんの洗濯」のキャラグッズも自作しているふかさくえみさん

『鬼桐さんの洗濯』を描くにあたっていろいろ調べてみたら、洗濯って思っていた以上に化学の世界で、かつて勉強していたものと繋がって、はっとしました。ちゃんと理屈がある。アルカリ性か酸性か、水溶性か油溶性か不溶性か、熱で変化してしまうものか、どの薬品に反応するか、汚れの性質によってそれぞれに適した解決法がある。でも場合によっては布まで傷めてしまうので、衣類を守りつつ汚れだけ器用に落とそうと思ったら、汚れの性質も布の性質も理解している必要がある。黄ばみも化学反応。失敗するのには原因があって、解決法がある。中にはどうやっても元通り綺麗とはいかない場合もあるけど、知識を絞ってできる限りの最適解を探していく。