少なくともこうすると服がダメになるとか、この汚れは自分でも洗えるとか、これまでに積み重ねてきたものでだんだん想像できるようになってきて、世界の仕組みがひとつわかったというと大袈裟ですけど、洗濯を知るって実は視界が広がって結構面白いことなんじゃないかなと思います。そういうところも化学と一緒だと思います。
国家資格のクリーニング師試験対策テキストで勉強
──文献などはどうやって調べられたのですか?
ふかさく まず、地元の図書館に通って「洗濯」に関連する本を片っ端から読んでみました。あとはネット検索で「クリーニング業界」の展示会があるのを知って会場まで行き、プロの道具に触れたりカタログや業界紙をいただいたり。 あとは、古書店をまわったり、国会図書館でだいぶ古い文献を調べたりもしました。
『詳説クリーニング クリーニング師編』(全国生活衛生営業指導センター/ERC出版)は、国家資格のクリーニング師試験対策テキストです。最初はクリーニング業務がわかる資料がなかなか見つからなくて、たどり着いたのがこの本でした。この本で基礎から勉強させてもらいましたね。繊維やボタンの性質、洗い方の種類、公衆衛生、法律の話など網羅されていて資料としてたぶん一番お世話になっている本です。
昔の洗濯知識も描いていけたら
──参考文献の中にある大正時代の洗濯本には、「花嫁講座」とタイトルに入っているのもありますね。素材や洗剤のほかに、面白い発見はありましたか?
ふかさく 『続主婦之友花嫁講座 洗濯と衣類整理』には汚れに応じてあらゆる薬品や道具を駆使して洗濯する方法がぎっしり載っているんですが、驚愕なのはこの本がクリーニングのプロではなく、一般家庭に向けられた本ということなんですよね。シミ抜き、着物の洗い張り、防水加工の仕方まで載っていたりする。ご家庭でそこまで求められてしまうのかと。この時代に生まれていたら私にはとても無理ですね...。 アイロンにしても 昔は温度調整できなくて水が蒸発する音で判断していたり、今より不便な分いろんなコツや技術が求められている感じが面白いですね。洗濯の技術も歴史も、知れば知るほど奥深く面白いので、何百年も生きる「人ならざる」キャラクターたちの特性を活かして、昔の洗濯知識も描いていけたらいいなと思っています。