ただ、正確に伝えようと説明しすぎると読む方も退屈だと思うので、あくまでもキャラクターの魅力とストーリーの面白さを大事にしながら、本格的な技術や専門用語をバランスよく描くよう意識しています。
なぜ店主を“鬼”にしたのか
──「洗濯屋鬼桐」の店主である、鬼の鬼桐(おにぎり)シオ子さんと、住み込みでバイトをしている柊木(ひいらぎ)茶子(ちゃこ)ちゃんという設定はどうやって思いつかれたのですか?
ふかさく 鬼って「人魚姫」や「バンパイア」などに比べたら、わりと自由にイメージできる気がしたんです。それに長生きなので、いろいろな種族との交流が描けるかなと思って……。あとは、異世界と人間界どちらにも寄り添って描きたかったので、じゃあ鬼と人間のコンビにしよう、と決めました。
魔王くんも最初から考えていたキャラクターです。最初はもう少し年上のチャラいお兄さん設定の予定だったのですが、「魔王なのにマントにワインのシミをつけた」という情けない感じが描きたくて、次第に年齢設定も中学生に変えて、よりかわいい方向にシフトしました。実は私のお気に入りのキャラクターなので、結構よく出てきます(笑)。
服を着るという意味では、人間も鬼も妖怪も同じ
──「魔王といえばマント。そこにワインのシミがついたら……」というように、キャラクターから衣類とその汚れをイメージして描いているのですか? それとも、描く汚れを決めてから衣服とキャラクターを考えているのですか?
ふかさく その時々によっていろいろですね。洗濯方法や素材からキャラクターを考えることもあれば、キャラクターが先で「この種族はどんな衣服を着ているんだろう」と想像することもあります。たとえば麻の種類ごとに異なる洗濯方法を紹介しようと思った時は、麻のワンピースを着たキャラクターで説明しようと考え、春と夏の女神様を登場させました。
結局、服を着るという意味では、人間も鬼も妖怪も同じなんですよ。服を着る種族がいる限り衣服はなくならないし、汚れの数だけ物語があるので、その汚れを解決していくストーリーを、さまざまな視点で描いていけたらと思っています。
──お気に入りや描きやすいキャラクターはいますか?
ふかさく バンパイアの苺坂ぱせりさんと、雪女の深森ささめちゃんは、1回限りのゲストのつもりで描いていたのですが、気がついたらたくさん描いていて、今ではすっかりレギュラーですね。まあ、担当さんが「ぱせり推し」というのもあるんですけど(笑)。