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初回放送は1969年…脚本執筆歴60余年の巨匠が明かす『サザエさん』が“超ご長寿番組”に育った“納得の理由”

初回放送は1969年…脚本執筆歴60余年の巨匠が明かす『サザエさん』が“超ご長寿番組”に育った“納得の理由”

『辻真先のテレビアニメ道』より #1

2021/10/03
note

第1話カツオ主演の「75点の天才!」

 前記したようにTCJがアニメの制作を担当したが、脚本のオーダーは広告代理店宣弘社の松本美樹が中心になって行われた。

『おたからサザエさん』1巻

 まず数ある原作の中から、4コマを1本あるいは複数本、それに話のメインとなるキャラのローティションなどを按分して選び、当時のシナリオライター3人に割り当てる。ざっくり言えば、タラやカツオなど年少組の話を雪室俊一が、サザエやマスオたちを城山昇が、波平・フネなどを辻が書いた。

 正式なルールがあったわけではなく、だいたいの目安がそうだった。ま、ぼくのケースは書き手のトシが持ち役に反映したのだろう。

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 原則でしかないので、ぼくの書いた「75点の天才!」(第1話になったので多くの人が目にしただろうが、飽くまでたまたまの第1話である)はカツオが主演を務めている。

 初期の『サザエさん』では磯野家の隣に作家の伊佐坂難物先生が住んでおり、これはぼくが主として書いていた。番組の進行中に、難物がよその局に出ることになり転居させたので、ぼくの手から離れた。のちにその話が壊れたため、伊佐坂家はまた『サザエさん』に戻ったはずだが、そのときは今度はぼくが番組から離れていた。

初期の『サザエさん』制作ルール

 長期にわたる番組なので、生身の人間どうよう有為転変があるのは致し方ない。提供東芝の名前さえ消えたが、今なお『サザエさん』はフジテレビ番組網の一角を守って、最長不倒の記録を更新しつつある。

はじめに宣弘社の松本プロデューサーが敷いた設計図——

 

・時事ネタを使わない(地震など)。

 

・マイナス方向の話題を出さない(家計の赤字など)。

 

・流行に左右されない(ファッションなど)。

 

 などなど。

 時代の移り変わりで揺れに揺れるルールだが、とにもかくにも墨守を続けた結果のロングランであってみれば、虚心にスゴイという他はない。

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辻 真先のテレビアニメ道 (立東舎)

辻 真先

リットーミュージック

2021年8月26日 発売

初回放送は1969年…脚本執筆歴60余年の巨匠が明かす『サザエさん』が“超ご長寿番組”に育った“納得の理由”

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