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カルト村に自ら入村した父は、「禁酒」の決まりができて以降、大好きなお酒を一切口にしなかった…そんな父を見て気づいた“本当の自由”

『カルト村の子守唄』作者・高田かやさんインタビュー#2

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, ライフスタイル, 娯楽, 読書

 あと、労働は新しい世話係さんが来る前から普通にありました。労働というより家の手伝い感覚でしたが、宿舎の掃除や畑の草むしりや自分たちの使った食器の洗浄など普通の子供がするようなお手伝いはしていました。新しい世話係さんが来てからはその時間がきっちりと区切られたことと、「掃除をするのではなく、それを通して心を磨くのだ」みたいな、その作業をやる際の「心得」が貼り出され、その通りに作業することを求められるようになったんです。なにかと「意味を持たせよう、意味があるものにしよう」という雰囲気になっていきました。

父は決まったことはきちんと率先してやる人

お金さま、いらっしゃい!

――村の大人も、当時はお酒やタバコもOKだったんですね。とくに高田さんのお父さんは村の外の温泉に行ったり、宇多田ヒカルのCDを買ったり、WOWOWに加入したりと、かなり自由奔放な印象です。村を出てからの日々を描いた『お金さま、いらっしゃい!』によると、お酒好きでもあるようですが、急に禁煙や禁酒を言われて、抵抗感はなかったのでしょうか? 禁止されて以降、こっそり飲むこともなく? 

高田 父は本当に自由な感じでしたが、村の考えに本気で賛同して自ら村に入った人なので、村で「こうしよう」と決まったことはきちんと率先してやる人でした。お酒が大好きで毎晩のように晩酌していたけれど、「人間の幸せにお酒は必要だろうか? なくてもいいんじゃないかな?」という意見が村の中で出た後は、お酒を隠れて飲むことは一切なかったし、一般社会との行き来でお酒を勧められることがあっても固辞していました。もし飲みたかったとしたら普通に「お酒飲みたいんだけど」と村に提案しただろうと思います。

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高田さんのお父さんが宇多田ヒカルのCDを買ってきたシーン

本当の自由は、一見不自由である枠の中にある

 父は、「村だからこうしてはいけない、村だからこうあるべきだ」ではなく、「みんなで作る村だからどんどん自由になんでも言っていこう」というタイプの人でした。父を見ていると、本当の自由は、一見不自由である枠の中にあるんじゃないかなと思うことがあります。

 私は新しく知ったことを実際に試してみたくてうずうずしてしまう性分だったので、村の高等部時代にこっそり密造酒を作ったこともありました(笑)。それが全体の考えなのか、個人の考えなのかの違いはありましたが、「実践する」という点では父に似ていたのかもしれないですね。

カルト村の子守唄

高田 かや

文藝春秋

2021年11月5日 発売

カルト村に自ら入村した父は、「禁酒」の決まりができて以降、大好きなお酒を一切口にしなかった…そんな父を見て気づいた“本当の自由”

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