文春オンライン

コロナで行動が制限され、夫がうつっぽく…自由のないカルト村で生まれた高田さんが感じた「村で暮らして良かったこと」

『カルト村の子守唄』作者・高田かやさんインタビュー#3

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, ライフスタイル, 娯楽, 読書

note

村の話が終わった今が、お休みするちょうど良いタイミング

――しばらく漫画を描くことをお休みされると伺って、とても残念に思っています。描くことをやめてしまうのは、すごくもったいないと思いますが……。

高田 もともとコミックエッセイを描こうとしたきっかけは「旅行や食べ物の話を描いてお金がもらえるなら、ありがたい」だったので、そこに向けて自己紹介代わりにカルト村の話を描きました。おかげさまで『うまうまニッポン! 食いだおれ二人旅』で大好きな食べ物の話も描けましたし、村の話が終わった今が、漫画をお休みするちょうど良いタイミングだと思います。

 村では「趣味に走る」ということは禁止で、ポスターや掲示物の絵を頼まれても、「少しでも凝ったり笑いをとろうとしたりした作品」は全て却下されてきました。初めてネームの打ち合わせをしたとき、編集担当者から「絵が同じような大きさでメリハリがない、もっと大きく描いたコマがあったほうがいい」とアドバイスをもらったとき、どういう意味か分からず詳しく描き方を聞いたら、昔、村で描いて却下されたような、人物をデフォルメしたり、変な動きをさせたりして大げさに笑いを取りに行くような絵が入ってもいいということだったのです。「なぁんだ、中学生の頃描いていたように描けばいいのか」と思ったものの、そこで指摘されるまで、自分がかつてはそういうふざけた絵を描いていたということをすっかり忘れていたんですよね。

ADVERTISEMENT

うまうまニッポン! 食いだおれ二人旅

 そういう絵を自由に描ける環境になったのに、なぜか未だにふざけたり時間をかけた絵を描くと罪悪感を感じるんですよね……。どうも自分を出そうとするとダメみたいですね。

今後ものんびり楽しく暮らして行くつもり

 今は、漫画の仕事をお休みして、会社勤めがしてみたいです。会社勤めなら罪悪感もないし、社会保障もあるし月給もいただけますし(笑)。コロナ禍で人が減って困っている産業や、パソコン入力や電話応対など自分のできることが生かせる職場が見つかると嬉しいです。

――ファンへのメッセージをお願いいたします。

高田 コミックエッセイルームで毎月連載更新を楽しみにしてくださった方、本を読んでくださった方、昔、村で私の描いたマンガを欲しがってくれた子たちほか、今まで私を応援してくださった全ての方々に深く感謝いたします。本当にありがとうございました。お陰さまで、老後の不安が少しだけ軽くなりました。とても大変な時期ですが、今後ものんびり楽しく暮らして行くつもりですので、どうぞ皆様も健康に幸せにお過ごしください。もしお手紙をくださる場合は、暮らしてらっしゃる地元の美味しいものや、耳より情報を教えてくださるとありがたいです。

カルト村の子守唄

高田 かや

文藝春秋

2021年11月5日 発売

コロナで行動が制限され、夫がうつっぽく…自由のないカルト村で生まれた高田さんが感じた「村で暮らして良かったこと」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー